ストレスの概念の流れ

 近年、「ストレス」という言葉は、なにかにつけてよく用いられる。メディアにも「ストレス」という言葉はあふれ、それを目にしない、耳にしない日はないほどである。しかし、あまりにも広がりすぎた「ストレス」という概念は次第にその実体を希薄化されつつある。そこで、まずどのような研究がなされてきたかを見なおしてみる。

 Cannon(1932)は、イヌに吠えたてられたネコに、瞳孔の拡大・唾液や消化液の減少・消化 管の運動の停止などといった、生理学的な変化が起こることを発見した。そしてこういった変化は生体が危険にさらされると全力をあげてそれに立ち向かう(Fight・闘争)か、または全力で逃げ出そう(Flight・逃走)とし、全身の力をその目的のために使う必要が生じるので、その準備のために起こると考えた。Cannonの「緊急反応」、またはCannonの「ストレス学説」と呼ばれているものである。この学説は精神的な感情の動きが、身体に影響を及ぼすメカニズムの研究を生理学の一大テーマにしたという点で、第一歩ともいえる、意義ある学説であった。しかし、現代人がさらされている状況は、ネコがイヌに吠えたてられるという直接的で一時的かつ激烈な状況よりも、もっと心理的・社会的で、毎日繰り返される持続的な不安、怒り、喜びなどであると考えられている。また、Dubos(1970/1965)が、「人間の応答の生来のものは、過去の進化の頃に、当時支配的であった条件に適応させるべく発達したものであり、こうした条件は現在ではもう存在していない。ここでは、このような昔からの応答の存続が、現代生活に通常の条件のもとでの生理的なあつれきの原因をなすことがあることを指摘しておく」と、述べたように、身体的な意味での「闘争」や「逃走」が不必要な現代の人間社会において、それらの反応を起こすことが有効であるのかどうかを疑問視する声が高い。

 Cannon(1932)はまた、「ホメオスタシス homeostasis」という新概念で、過去における多くの研究をまとめた。ホメオスタシスとは、個体全体から、細胞にいたるまで生命体内部のあらゆる部分が、外部からの刺激に対し、自ら「内部環境 milieux intrieurs」(Bernard,1878)を定常に保とうとするメカニズムのことである。そして、病気という状態は、外部からの刺激と、ホメオスタシスとの葛藤と考えられる。この概念は今日でもストレスのひとつのモデルとして、広く認められているものである。

 Selye(1936)はネズミに異物を投与するなどの刺激を与えた際、引き起こされる症状のうち、刺激によって異なるものを「局所適応症候群 Local Adaptation Syndorome」、どの刺激に対しても引き起こされるもの(1.副腎皮質の肥大 2.胸腺・全身のリンパ節の萎縮 3.胃・十二指腸の出血や潰瘍の三つの症状)を、「全身適応症候群 General Adaptation Syndorome」と名付けた。全身適応症候群は時間を追って、三相期に展開するものであるとした。その三相期とはすなわち1.顕著な急性徴候を示す、警告反応 alarm reaction 2.徴候が消失する、抵抗期 stage of resistance 3.抵抗の完全喪失をともなって生体の崩壊が起こる、疲憊期 stage of exhaustionである(Selye,1988/1976)。全身適応症候群のこれらの三相期における変化は、ストレスの計量可能な状態として、Selye,H.自身も重要視している。

 さらにSelye(1988/1976)は、ストレスではないものを規定することで、ストレスの定義を試みている。その内容は以下のようなものである。1.ストレスは単純な神経性緊張ではない。神経系を有しない下等動物や麻酔下の無意識な患者、生体外の組織培養した細胞などにも、おこりうる。2.ストレスは副腎皮質からのホルモンの緊急放出ではない。例えば、関節炎・結核など全身に波及しやすい炎症性疾患など、従来のアドレナリンの放出だけでは説明できない例も多い。3.副腎皮質からそのホルモン、コルチコイドを分泌させるのはストレスがすべてではない。副腎皮質刺激ホルモンであるACTHは、ストレスの形跡がなくてもコルチコイドを放出できる。4.ストレスは損傷の非特異的結果ではない。テニスの競技などでも、何も障害を与えることなく、相当のストレスを生起させることが可能。5.ストレスは、ホメオスタシス、すなわち生体の生理的恒常性から逸脱することと同じではない。音や光の感覚など生体の特異な機能は、実際には、その活動器官の正常な安静状態からの顕著な逸脱を起こす。これは機能亢進に対応する局所的な反応とみてよく、局所ストレスを起こすことはできるが、その程度も特異な活動強度に比例するものではない。6.ストレスが警告反応を起こすのではなくストレッサーが起こすのである。7.ストレスは概して警告反応や全身適応症候群とまったく一致するものではない。これらの反応は、ストレスの起こるある測定可能な臓器変化によって特徴を与えられている。したがって、変化自身がストレスであるわけにはいかない。8.ストレスは非特異的反応ではない。ストレス反応の類型はきわめて特異的なもので、高度に選択的な方法で、ある臓器(たとえば、副腎など)に影響をあたえる。9.ストレスは特異的反応ではない。定義によるストレス応答は、実質的にはいかなる作因によっても惹起され得るから特異的ではない。10.ストレスは必ずしもからだによくないものとは限らない。それは個体がストレスをどのように取り扱うかによる。創造的で、成功に満ちた仕事からくるストレスは有益であり、(Selye(1988/1976)は「有益ストレス eustress」と名付けた。)失敗、屈辱などは好ましくないものである。(「有害ストレス distress」)11.ストレスは避けられないものでもなく、また避けられるべきものでもない。ストレスはからだのいかなる要求にも非特異的に反応するからには、誰もが常にある程度のストレス状態にある。これらに加えて、ストレスは、身体のあらゆる適応反応の公分母であるとも述べている。

 Selye,H.の研究は、本質的には生理学的分野に限られており、彼自身、自分のストレス概念を「生理学的ストレス」と名付けていた。しかし、彼は戦後になって社会的な側面でのストレスについて、大いに語りかつ書いている(林,1993)。そして現在ではもっぱら、ストレスは、心理社会的なものとして取り扱われている。

 1950年代には、ストレスについて、以下のような見解が確立された。1.ストレスに対する反応には個人差があるということ。2.ストレスは状況そのものよりも、状況の認識により決まるということ。3.ストレスの程度は、一部、対応する個人の能力に依存するということである(坂部,1992)。

 1960年代は、世界の動揺を反映し、ストレス理論の心理面・社会面への応用が本格化してきた。その流れは二つに大別される。第一は、人間の社会生活面への応用である。この流れは心身症という新しく起きた精神科・内科の中間の臨床分野を柱とした。第二は社会精神医学という精神科の一部門の発達に組み込まれたものだった(林,1993)。

 Sells(1970)はストレスは次の条件下で起こると考えている。1.個人が、ある状況において利用しうる適切な反応をもっていない状況に反応することを要求される。適切な反応が利用できないのは、身体的不適、個人の反応のレパートリーのなかにおける反応の欠如、訓練、必要な知識または準備のための機会の欠如による。2.効果的に反応するのに失敗した結果が、個人にとって重大である。状況における個人的なかかわり合いは、個人に対する結果の重要性によって定義されうる。

 McGrath(1970)は、ストレスは環境的要求とある生活体の反応能力との間に、著しい不均衡の存在するとき発生すると述べている。その上で、彼はこの公式化が、ストレス研究に有用で、議論の余地のない表現となるためにはいくつかの条件が必要であるとした。1.Lazarus and Opton(1966)の主張するところの心理的ストレスまたは脅威の認知的評価の概念について。Lazarus等は環境的要求は、ある生活体が、その要求に対処できない、または、適切に対処できない、または、他の目的を危うくするのでなければ対処できないと予測するような場合にのみ、ストレスをひきおこしうるとした。この認識に立つと、ストレスは客観的要求と、生活体の反応能力との間の不均衡に存在するのではなく、認識された要求または主観的要求と認識された反応能力との間の不均衡に存在することとなる。この認識は、要求と能力の不均衡の認知的評価を脅威または心理的ストレスの、必要でありかつ十分な条件とするものである。2.Sells(1970)が述べているように、ストレスまたは脅威は、要求を満たすのに失敗した結果が重要であるとき、または、それが、生活体にとって重要であると認識されたときにのみ発生する。脅威または、心理的ストレスは要求を満たすことの失敗から起こる不利益な結果の予想を含むのである。3.生活体と環境の間でのストレスフルな不均衡を想定するとき、そのほとんどは、多すぎる要求または生活体の能力を超えるような要求である。しかし、要求の少なすぎる環境(感覚的な隔離・制限、刺激の貧困、社会的孤立、監禁など)もまた、ストレスフルなものであることは、多くの文献によっても支持されるところである。このような過大負荷および過小負荷の影響が同じ現象として概念化されるべきかどうかについては議論の余地があるが、この2種類の不均衡はストレス研究の幅広いプログラム的な考察には入れられるべきである。4.過大負荷にせよ、過小負荷にせよ、定量的負荷対定性的負荷の問題、および、生活体の異なる部分に対する特異的な負荷の問題を提起する。

 Welford(1974)によれば、ストレスは生活体が、それを直すことができないか、または直し難い、最適状況からの乖離の存在するとき発生する。そしてさらに、もしこれが正しいとするならば、以下の三点を包含している。1.人は中等度の要求が課せられるような状況の下において、最もよく機能する。よって、ストレスの原因としては、最適条件からの、正・負、両方への乖離を考えることが必要である。最も、前者は後者よりも、よりよく理解され、また、おそらく後者よりもしばしば起こる。2.McGrath(1970)が強調するように、ストレスは、要求と生体の能力との不均衡の結果である。したがって、ストレスは、要求に影響する環境的並びに社会的条件のみによって変化するのではなく、能力に影響する生まれつきの才能、訓練、身体的条件によっても変化する。Sells,S.J.の結果の重要性に関する見解も忘れてはならない。3.最適条件からの乖離と、Sells,S.J.の個人的なかかわり合いへの言及は、ストレスを動機づけと結びつけることになる。

 ストレスと、動機づけとの関連については次のように記されている。最適条件より劣る状況を改善しようとすることは、ほとんどの動機づけの理論で、証明されている。ある状況を改善しようと動機づけが発生し、活動を起こすが、それによって状況が改善されなかった場合にストレスが生起する。

 Mason(1975)は、主に使用されているストレスの四つの定義について検討している。1.単に刺激のパラメーターとして定義。しかし、刺激に対する反応の機構を予測するのにそれでは不十分である。このアプローチでは、個人差の説明もできない。2.単に反応のパラメーターとして定義。しかし、現在、生体の適応能力に負担が課せられたとき、例外なく引き起こされる反応が見出されていないので、使用できない。3.刺激-反応相互作用として定義。ストレスは特徴づけられた一連の反応状態を引き起こすというただし書きをつけた上で、誘発的な状況などを表すために使用される。このアプローチもまた、完璧ではない。じゅうぶんに使用できて、かつ包括的な一群の反応状態をはっきりさせることは困難である。4.刺激、反応および脅威の評価、対処のスタイル、心理的防衛体制、社会的環境のような介在的過程の相互に影響しあう諸因子の全スペクトルを包括するものとして定義。このアプローチは、Lazarus(1990)により特に発展させられてきたもの(表1参照)で、心理学的ストレス分野における他の多くの研究者達の一般的な概念的アプローチを反映している。語義の上で、「ストレス」という言葉に抽象的性格を与えていること、生体に作用する力として用いてきた趨勢に反していることを批判してはいるが、同時に、現在の混乱を脱出するには、この組織化した研究が必要だとも述べている。

      表1 ストレスと情動過程のシステム変数図式(Lazarus,1990)

因果関係前件       媒介過程          直接的効果       長期的効果            

Causal Antecedents  Mediating Processes    Immediate Effects   Long-term Effects

          

人的変数            出会い1...2...3...n

Person Variables:        Encounter1...2...3...n 

 価値観,掛り合い,目標       ある出会いの中での回数1...2...3...n

 Values,commitments          Within an encounter,time1...2...3...n

       and goals 

 一般的信念,たとえば,

 Genaral beliefs,e.g.,

  自己評価  心理的な

  Self-esteem         「良い状態」

  習熟                                 (精神的健康)

Mastery                                  Psychological

  管理のセンス       1次評価(賭けられる) アフェクト     well-being

  Sense of control     Primary appraisal       Affect     身体的健康/

  人間相互の信頼       (stakes)          生理的変化      疾病                           

  Interpersonal trust  2次評価(対処行動の選択)   Physiological Somatic health/

  実存的信念      Secondaryappraisal        changes      illness

  Existential beliefs     (coping options)               

                                  

環境的変数          対処行動         出会いの結果の質  社会的機能

Environmental Variables:  (社会的支持の利用を含む):  Quality of      Social

  要求        Coping(including use of    encounter outcome   functioning

  Demands              social support):

  資源,たとえば,       問題中心型

  Resource,e.g.,        Problem-focused forms

  社会的支持組織        情動中心型

  Social support network    Emotion-focused forms

強制

  Constraints

  一時的側面

Temporal aspects 

          注意:ここには示されていないが、モデルは回帰的である。

             また、短期および長期的効果の平行にも注意せよ。

ストレス源(ストレッサー)について

 ストレス測定を行う場合、過去約20年にわたり主流であったのが、ストレス源がどれほどあったのかを測る方法、すなわち、入力型測定法(Lazarus,1990)である。

Holmes and Rahe(1967)の研究は色々な生活上の出来事が個人のストレス関連病への感受性を増加することを示そうとするさまざまな研究の端緒ともいえるものである(表2)。「配偶者の死」(100点)と、「結婚」(50点)を基準に、項目にある生活上の出来事が0から100までのどこに位置するのかを394人のアメリカ市民に、点数をつけさせることで測定したものである。彼らの示唆する、ストレス源となりうる生活上の出来事には、健康・家族関係・経済・生活条件・教育・宗教および社会の変化が含まれており、その後の研究の結果、合計得点が過去1年間で、300点を超える場合は、近い将来、ストレスに関係する病気にかかる確率は、80%、150から299点の間だと、50%、150点以下であれば、30%と述べている。また、生活変化が増加することも、生活変化の合計得点が大きくなることも、もし病気にかかるなら、軽い病気(頭痛、不安発作など)よりも、重い病気(精神分裂病、心臓発作など)にかかる可能性を高めるとも主張している。この論文は、多様な集団内における同様な研究を活性化させたという点で、重要なものである。しかし、ごく普通の日常生活に関することなど、項目にかけている点が多いという見解や、一般的な平均の意見値が、ある特定の個人に適応できるかという指摘(林,1993)はある。

 その後、様々な生活事件研究(life events research)が行われたが、Rabkin and Struening(1976)がそれらをまとめている。それによれば、まず生活事件研究とは、疾病の発生と、個人によってなされる社会的適応を要求する事件の数の最近の増加との間の時間的関連を示すことである。この事件の衝撃は累積的なもので事件の大きさと、その影響力は比例すると考えられる。その基本的な想定は、疾病の型にではなく、タイミングに影響して、沈降要因として作用する。また、生活事件研究に老いては一連の条件(社会的ストレッサー、媒介要因、ストレス、発病)が考えられる。1.社会的ストレッサーとは、個人の環境を変える、個人生活の変化をいう。2.媒介要因とは、ストレスフルな事件、またはストレッサーに対する感受性に影響する個人の社会サポートシステムの諸特性であり、あるいは、病気による危険を高める長期にわたっての疾病素因である。一般に媒介変量の考慮は、社会的ストレッサーに対する感受性の相違の理解に役立つ。3.疾病素質要因とは、個人の疾病に対する感受性を変化させる長期にわたる行動のパターン、幼児の経験などである。4.沈降要因とは、前とは異なり、発病のタイミングに影響するもので、たいていの場合、現在の、状態または、特性の多少とも一時的な変化をいう。

 

   表2 社会的再適応評価尺度(Holmes and Rahe(1967) による)

 

出来事

ストレス値

出来事

ストレス値

出来事

ストレス値

出来事

ストレス値

配偶者の死  

100

妊娠

40

息子や娘が家を離れる

29

気晴らしの変化

19

離婚

73

性的な障害

39

姻戚とのトラブル

29

宗教活動の変化

18

配偶者との離別

65

新しい家族メンバーの獲得

39

自分の特別な成功

28

社会活動の変化

19

拘禁(期間)

63

ビジネスの再調整

39

妻が働き始める,仕事をやめる

26

一万ドル以下の抵当やローン

17

親密な家族メンバーの死

63

経済状態の変化

38

学校に行き始める,終了する

26

睡眠習慣の変化

16

自分のけがや病気

53

親密な友人の死

37

生活条件の変化

25

同居の家族数の変化

15

結婚

50

他の仕事への変更

36

個人的な習慣の変化

24

食習慣の変化

15

失業(解雇)

47

配偶者との口論の数の変化

35

上役(ボス)とのトラブル

23

休暇

13

婚姻上の和解

45

一万ドル以上の借金(抵当)

31

労働時間や労働条件の変化

20

クリスマス

12

(定年)退職

45

借金やローンでの抵当流れ

30

住居の変化

20

軽微な法律違反

11

家族メンバーの健康上の変化

44

職場での責任の変化

29

学校の変化

20

 

 

1.推定では、現代の病気の80%はストレスが原因である。

        2.1980年代初頭、英国の10人に1人の男子、5人に1人の女子が軽い精神安定剤の投与を受けている。

        3.毎年4〜5%の人が不安神経症と診断され、治療を受けている。

        4.毎年英国では、25万人が冠動脈障害(最も多い死因である)で亡くなっている。これは、1953〜1973年の34〜44歳の男子の死亡率の2倍である。

        5.英国では、毎年ストレスに直接関係する原因のために、企業全体として延べ4000万日が無駄になっている。

        6.英国の産業がストレスに関わるコストとして毎年費やす金は、控えめに見積もっても、

         13億ポンド(約3500億円)になる。

        7.米国では、過去50年間に冠動脈障害が5倍増加した。

        8.米国では、800万人が胃潰瘍になっており、1200万人がアルコールがらみの問題を持っている。

        9.米国人は、毎年50億錠のトランキライザー(精神安定剤)、16000トンのアスピリン

         (頭痛薬)を消費している。

心因性の症状について

  ある個体が、さらされている要求・環境に十分な対処ができなければ、ストレス状態(表4)になりうる。さらには身体的症状(表5)あるいは精神的症状(表6)がでることもある。

     表4 ストレス状態(Powell and Enright,1991/1990)

 身体的

 心拍数の増加、血圧の上昇

 過呼吸

 めまい、ひりひりする、発汗、しびれ

 筋肉の収縮−かゆみ、痛み、頭痛、震え

 偏頭痛

 胃痛、吐き気

 頻尿、下痢

 喘息、発疹、癌など

 

精神的

 物事に集中できない

 なかなか決断がつかない

 物覚えが悪い(忘れやすい)

 くよくよ良くないことを考える(抑うつ的気分)

 不合理なことを考える

 破局的思考(破滅しそうで悩む)

 

行動上

 不安が起きそうなことを避ける

 引きこもりがちになる

 酒、タバコ、薬物を飲む量が増える

 眠れない、朝早く目が醒める

 攻撃性、イライラが高まる

 脅迫的に何かをする

 性欲が落ちる

 食べ物の好みが変わる

 表5 心身症の分類 (日本精神身体医学界医療対策委員会,1970)

 循環器系

本態性高血圧症、本態性低血圧症(低血圧症候群)、

神経性狭心症、一部の不整脈、心臓神経症

呼吸器系

気管支喘息、過呼吸症候群、神経性咳嗽

消化器系

消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎、過敏性大腸症候群、

神経性食欲不振症、神経性嘔吐症、腹部緊満症、空気嚥下

内分泌代謝系

肥満症、糖尿病、心因性多飲症、甲状腺機能亢進症

神経系

偏頭痛、筋緊張性頭痛、自律神経失調症

泌尿器系

夜尿症、インポテンツ、過敏性膀胱

骨筋肉系

慢性関節リウマチ、全身性筋痛症、脊椎過敏症、書痙、

痙性斜頸、頸肩腕症候群、チック、外傷性神経症

皮膚系

神経性皮膚炎、皮膚掻痒症、円形脱毛症、多汗症、

慢性蕁麻疹、疣贅

耳鼻咽喉科領域

メニエール症候群、咽喉頭異常感症、難聴、耳鳴り、

乗物酔い、嗄声、失声、吃音

眼科領域

原発性緑内障、眼精疲労、眼瞼痙攣、眼ヒステリー

産婦人科領域

月経困難症、無月経、月経異常、機能性子宮出血、

更年期障害、不感症、不妊症

小児科領域

起立性調節障害、再発性臍仙痛、心因性の発熱、夜驚症

手術前後の状態

(外科領域)

腸管癒着症、ダンピング症候群、

頻回手術症(ポリサージャリー)、形成手術後神経症

       歯科口腔領域

特発性舌痛症、ある種の口内炎、口臭症、唾液分泌異常、

咬筋チック、義歯神経症

 

表6 主な精神障害の分類

心因性精神障害は心理社会的要因が主たる原因で引き起こされる。内因性精神障害は現在も原因が不明で、環境因子よりも生物学的な要因が発病に主要な役割を持つと考えられているが、発病の誘因としては各種の心理社会的ストレッサーが関与する。外因性精神障害は依存症を除いて、明らかな身体的原因を持ち、その発病に心理社会的な環境因子の、関与は少ないと考えられる(中野・風祭,1991)。 

                            心因性精神障害

   心因反応

   

   神経症

 

 

   

 

   人格障害

心理社会的ストレッサーを主原因とする

[伝統的診断]戦争神経症、拘禁反応、感応性精神病、抑うつ反応、      

        妄想反応

 [DSM−V−R]外傷後ストレス障害、短期反応精神病、

          誘発性精神病性障害、適応障害

 [伝統的診断]ヒステリー、強迫神経症、不安神経症、恐怖症、

        心気症、神経衰弱、離人症、抑うつ神経症

 [DSM−V−R]不安障害、身体表現性障害、解離性障害、性障害

 [DSM−V−R]A群:妄想型、分裂病質型、分裂病型

          B群:反社会型、境界型、演技型、自己愛型

          C群:回避型、依存型、強迫型、受動攻撃型              

 内因性精神障害

   精神分裂病

   躁うつ病

ストレス状態に陥りやすい脆弱な素質を主原因とする

 破瓜型、妄想型、緊張型

 単極性うつ病、双極性うつ病、躁病

 外因性精神障害

  器質性精神障害

  症状性精神障害

  中毒性精神障害

明らかな身体的原因を持つ

 脳障害を原因とする

 全身疾患を原因とする

 アルコールや薬物を原因とする