(2)自己発見尺度についての結果と考察
尺度の評価結果により得られたtテストの結果をここで報告する。トータルとは、
competence(コンピテンス)・acceptance(自己受容)・consciouns(自意識)の集計である。pre
はセミナー前、postはセミナー後である。
トータル(
competence・acceptance・consciouns)の結果
|
Mean |
Std Dev |
Minimum |
Maximum |
PRE |
250.5 |
87.2816757 |
-23.0 |
301.0 |
POST |
201.1666667 |
16.2527387 |
178.0 |
238.0 |
(Pre
とPostの変化)Maen |
Std error |
t |
|t| |
-49.3333333 |
28.6132342 |
-1.7241439 |
0.1126 |
competence
(コンピテンス)の結果
|
Mean |
Std Dev |
Minimum |
Maximum |
PRE |
106.66667 |
27.9328198 |
20.0 |
124.0 |
POST |
77.5 |
41.903569 |
28.0 |
168.0 |
(Pre
とPostの変化)Maen |
Std error |
t |
|t| |
-29.1666667 |
18.7231963 |
-1.5577825 |
0.1476 |
acceptance
(自己受容)の結果
|
Mean |
Std Dev |
Minimum |
Maximum |
PRE |
74.250 |
40.4814772 |
-52.0 |
98.0 |
POST |
70.5 |
19.2282935 |
13.0 |
83.0 |
(Pre
とPostの変化)Maen |
Std error |
t |
|t| |
-3.75 |
6.8380896 |
-0.5483988 |
0.5944 |
consciouns
(自意識)の結果
|
Mean |
Std Dev |
Minimum |
Maximum |
PRE |
69.5833333 |
20.965158 |
9.0 |
90.0 |
POST |
53.1666667 |
29.6277166 |
10.0 |
85.0 |
(Pre
とPostの変化)Maen |
Std error |
t |
|t| |
-16.4166667 |
10.2805040 |
-1.5968737 |
0.1386 |
上記の表を参考に、平均値(
Mean)を見てみる。トータルによるとpre(セミナー前)250.5点から post(セミナー後)201.167点へと低くなっていることが分かる。次に
competence(コンピテンス)は、 pre(セミナー前)106.6点から post(セミナー後)77.5点へと低くなっていることが分かる。acceptance
(自己受容) は、pre(セミナー前)74.25点から post(セミナー後)70.5点へと低くなっていることが分かる。consciouns
(自意識) は、pre(セミナー前)69.58点から post(セミナー後)53.167点へと低くなっていることが分かる。また上記の表より、t>|t|の結果を見てみると、
competence(コンピテンス)、acceptance(自己受容)、 consciouns(自意識)ともに、t>|t|の関係が成り立たないためpre(セミナー前)と post(セミナー後)のデータ間には、相関関係は見られないという結果となった。competence(コンピテンス)とは、環境との交流の積み重ねの結果生じるものであり、効果的に環境と相互作用する能力である。1年間のセミナーを通して交流が深まっていくということからこの能力が上がるとの仮説を立てていた。また、 consciouns(自意識)には、私的意識と公的意識がある。前者が高い人の傾向として、その時々での自分の意見、態度を自覚しているため、態度と行動との間に一貫性がある(Scheier,1980)。後者が高い人の傾向として、他者からの評価的態度に敏感であり(Fenigstein,1979)、他者の目を意識して自己表出の仕方をコントロールする( Carver & Humphries,1981)。ビデオ録画により自分自身を客観的に見ることができることより、ここでの点数も上がるのではないかと仮説を立てていた。 acceptance(自己受容)については、他者への共感が、技術的に高くなるとともに、自分自身への受容も高くなるのでは、という仮説を考えていた。
すべての結果において、仮説が覆されたことについて考察すると、コンピテンスについては、まだ、効果的に環境と相互作用するまでに至っていなかったのではないかと考えた。自己受容については、自分の映ったビデオを見た人の中には、そぶりや話し方、また、普段の自分の癖や話の傾向を見て、打ちのめされたという人もいた。私たち評定者がビデオ観察をする中で、そのような発言をする人もいた。よって自己を受け入れるというよりも、まだ自分自身について、否定的な観点から眺めている段階、つまり、学習段階の途中で質問紙を行ったので、まだ受容されるには至ってなかったのかもしれない。自意識についても同様で、客観的に自分自身をとらえるにはいたらず、主観的に自分自身について反省していることが多い状況であったことが影響しているのでは、と考えられる。これらのことがデータに大きく関与し、すべての得点が下がったと考えられる。セミナー前とセミナー後についての相関も見られないことより、もう少し学習が深められた時期に質問紙を行うと、もう少し効果も表れ、違ったデータも得られたかもしれない。