第4章  評価の要点

 

 本章では、全24ケースを評価して、得た視点や、基準をもとにして、治療関係スケールの中の共感に関する尺度評価の具体的な行い方を、まとめてみる。私たちはこの実験のよりどころとして、セミナーで学んだことなどを参考にして、4つの評価基準を使った。それを下記に述べる。

 

1)非言語コミュニケーション(関わり行動)

@ジェスチャーや身体の動き

  1. 方向(上目づかい、目をそらす、直視する、流し目、目を落とす、目を配る)   
  2. 強弱(射るような視線、穏やかな視線、ぼんやりと焦点の合わない目見据える)
  3. 関わりについて(目が合う、白い目で見る、目がない、にらみつける、目をかける)

A音質、言語外の音声(笑い声、あくびなど)

声の調子  温かみの帯びた低い声でゆっくりと、その時の感情にそって変化する

  1. 声の大きさ(自信なく、臆病になると小さくなる)、
  2. 高さ(緊張で高くなる傾向)、話す速度(興奮すると早口)、 
  3. 明瞭さ(声の大小に左右) 
  4. はなしの間の取り方、発音するときに息を吐き出して話すか
  5. 息を吸い込みながらまたは、止めて話すか          

Bその場の空間について

距離の取り方…興味があるように・・座る位置(前の方に座る、めだたないように)

C香りや臭覚作用に関するもの

D皮膚による触感や温度に関するもの

生理的表出…自然であるように・・赤らむ、瞼がぴくぴく動く、目が潤む、こめかみの血管が浮き出る、がたがた震える、呼吸(どこで行っているか、速さ、深さ)    

E着飾りや化粧による自己表現で伝えること

   

2)質問法

@開かれた質問

面接を始めるとき

CLにさらに詳しく述べてもらうとき

CLの感情に焦点を当てるとき

CLの具体的な行動の事例を引き出すとき

どうして・なぜ・・・だと思われるんですか?という質問を多用しすぎない  ⇒CLを防衛的にする         

A閉ざされた質問

相手が「はい」「いいえ」や簡単な事実で答えられることを尋ねるとき

B質問の使い方

閉じられた質問よりも開かれた質問の方を多く用いる⇒CLは自分のペースで話すことができる

同時に複数の質問を連発しないこと     

 

3)明確化(最小限度の励ましと言い換え)

@瞬時的な発声

「ええ?」「そう?」「それで?」「それから?」

1語または2語の繰り返し

「もっとつづけてください」

「うむむ・・・」「うん」

クライエントが話をした文章の最後の数語をそっくり繰り返す

A沈黙(隠れた応答時間)の利用

応答を始める前に聞き手が数秒間待つこと

Bいいかえ

クライエントの名前及び代名詞としての「君」「あなた」

クライエントの最も重要な語句

クライエントの言及した言葉の本質をとらえて、濃縮し明確にしたカウンセラーの発言(話し手の言いたいことをキャッチしてそのポイントを繰り返す)

C意識の面積を拡大する作業

うまく意識化、言語化できないクライエントの状況や心境を的確に察知

解釈・指示・歪曲に陥らない

 

4)感情の反映

感情は重要である、という認識からでた言葉を展開する(肯定的情動に持ち込むこと)

「あなたは・・・と感じているようだが」

「あなたが・・・と感じているように聞こえますが」など

感情を指摘し、混乱したり、矛盾している感情に特に注意する。二重のメッセージに注意するが身体と言語の不一致に反映しないように

言い換えを加えて内容に触れる