はじめに
専門家でない人でもカウンセリングを学ぶ風潮が高まってきた。これは3年前の阪神・淡路大震災で、市民も役所も被災し、これからは、公の福祉という観点だけではなく、市民自ら公共の福祉の担い手になろうとしていく気運の表れであろう。その中で、神戸市社会福祉協議会、市民福祉大学の主催による、ヒューマンサービスコース中級コースが開催された。ここでは“自分自身”を客観的に見つけだす「自己覚知」を目標とする初級コースを終えた講習生が、援助者にふさわしいコミュニケーション能力を身につけ、よりよい活動につなげることを目標としている。そして、さらに、他者への共感を育んでいくこと、自分の利益ではなく、よりよい援助をする行為を通じて、よりよい共感をするための技術的なものを身につけていくことをこのコースは目標としている。
今、どんなことが必要か、感じるか、という認知的・情緒的活動を、ともにし、“人を通じて共感を学ぶ”が、主題とされている。
中級コースでの学習形態として相談場面の映像を題材に、テレビモニターやビデオカメラを組み合わせた機器(コミュニケーションラボ)を使う。そして、ビデオを通じて自分自身の会話の傾向、姿勢、身振りなどを客観的に見ることにより、学んでいく。そして、マイクロカウンセリング技法に乗っ取って授業を進めていった。我々は本研究においてはそのコミュニケーションラボがコミュニケーション技法の習得においてどれだけ効果があるか、ラボを使う初回と、最終回のビデオを見比べ比較、測定することが目的である。その際コミュニケーションで最も必要とされる共感を尺度として用いた。
この研究は援助を目的とした治療関係では一面においてアートであるとも言われ、援助者と援助技法は不可分である考えられてきたなかで、援助者のもつ治療的を要因を、実証的な観点から分析しようとする流れに大きく貢献するであろう。