【3】共感の評価尺度について

 

 共感は大まかに6つの尺度で評価することが可能である。

 カークホフ(Carkhuff,1969)やロジャース(Rogers,1975)は、共感の基礎として、積極的関心、尊重と暖かさ、具体性、即時性、批判的でない態度及び信頼性あるいは調和を考えた。

1)積極的関心

 積極的関心は、クライエントの経験の積極性を選択し、クライエントの発言の積極面に選択的に関わることと定義されよう。面接やカウンセリングの多くには、ただ単に問題のみを検討し、長所や可能性(能力)には言及しない傾向が見られる。共感について行ったと同様の5つの基準が積極的関心についても開発されよう。例えば下図のとおりである。

 

 レベル    1   2   3   4   5
_________________________________________________
    控除的     互換的     付加的

 控除的(マイナス)の応答では、カウンセラーはクライエントに何かうまく行っていないことを見いだすだろう。互換的な応答は、カウンセラーがクライエントの話したことに正確に留意してそれを熟考する応答である。付加的応答においては、カウンセラーは、最も困難な状況でさえも、クライエントが、何か積極的なことを、どのように行っているかを、そのクライエントに指摘する。たとえば、意気消沈して苦しみ、多くの問題について語るクライエントには、次のように言うだろう。「ジョン、私はあなた自身の問題をこんなに明確に述べるあなたの能力に敬意を表する。あなたには、自分がそのように意気消沈していることを感じる理由が分かっている。現在あるいは過去の問題を定義するあなたの能力について、もう少し私に話してみてください。」ロジャースは特に、もっと複雑な問題や人物に首を突っ込んで、肯定的資質を見いだすのを得意としていた。積極的関心は、おそらく真の共感の最も基本的な局面であろう。

2)尊重と暖かさ

 これは、感覚的で非言語的と考えられるならば、最もたやすく評価されるだろう。あなたは態度、微笑、声の調子によって尊重や暖かさを示す。自分の身体言語と合致するあなたの能力や、適切な状況での快い接触は、敬意と温情のバロメーターである。

3)具体性

 カウンセラーの具体的説明は、漠然とした一般性よりもむしろ特殊性にねらいを定めている。面接者として私たちが一番興味を抱くのは、特定の感情、特定の考え方、特定の行動例に対してである。たびたび強調してきたように、開かれた質問の中で最も役立つものの1つは、「〜の特定例を挙げてくれますか?」という問いなのである。

 具体性は面接を活性化し現実的にする。指示、フィードバック技法、解釈はすべて高度の特殊性を帯びている必要がある。さもなければ、クライエントの多忙な日常生活の中で見失われてしまうだろう。それにも関わらず、具体性が最も適切な応答ではない場合もままある。いくつかの問題はもっと一般的な言葉で議論する方が最善の場合もあるし、いくつかの文化集団はむしろ特殊性の好くほうを好む。共感、尊重と暖かさ、具体性の表現をめぐる文化的相違については、常に銘記しておかなければならない。

4)直接性(即時性、即効性)

 これは、面接を時制にかなったものにする有効な概念である。それは言語を利用して最もたやすく説明できる。例えば怒っているクライエントに応答するのに3つの時制が考えられる。「あなたは怒っていた。あなたは怒っている。あなたは怒っているだろう。」私たちは彼らが話しているのと同一の時制で他人に応答する傾向がある。いつも過去時制で話すクライエントが何人かいるだろうが、彼らは現在時制の議論から多くのものを得るであるう。他にいつも未来時制で話す者もいるし、いつも現在時制で話す者も何人かはいる。最も有効な応答は、おおむね現在時制のものである。時制の変化は、面接のテンポを速めたり遅くしたりするときに用いられる。カウンセリング・スタイルの多くのタイプにおいて、3時制のすべてを含む応答が、一般的傾向として最も強力であることを私たちは発見している。

 直接性を見るもう1つの方法は、カウンセラーとクライエントの関係という観点からである。その関係が個人的なものになればなるほど、それはますます即効的になる。面接者とクライエントの間の親密な点が明らかになってくると、このタイプの即時性は強大な威力を発揮するだろう。この意味において、カウンセラーとクライエントに焦点を合わせることによってまた、現在時制に身をおくことによって、関係は即時的になるのである。 

5)批判的でない態度

 積極的関心や敬意と密接に関係しているが、批判的でない態度をとるためには、あなたは自分自身の意見や態度を保留し、あなたのクライエントとの関係において、価値の中立を守ることが要求される。多くのクライエントは、あなたの信念や価値観に反するような問題や関心事を抱えて、来訪する。注意深くクライエントの言葉に耳を傾けると、あなたはどうして彼らがそのような立場や行動をとらざるを得なかったかということを了解できるだろう。難局難題に直面しても、それにめげずに働いている人は、批判を受けたり評価されたりする必要がないのである。彼らに必要なのは、彼ら自身と彼らの行動をあるがままに受け入れることなのである。

 批判的でない態度は、声の調子や身体言語を通じて、また是認をも否認をも示さない言明によって表現される。しかし、すべての資質や技法に相通ずることであるが、批判がクライエントの探求心を助長する場合もある。カウンセリングや面接には、王道はないのである。

6)確実性と調和

 確実性と調和は、矛盾や混乱したメッセージの裏返しである。カウンセラーや面接者は一貫して純粋であってほしいし、矛盾だらけにならないでほしい。当然のことであるが、人生は矛盾や逆説に満ち満ちており、クライエントに弾力的に対応するあなたの能力こそが、最も基礎的な次元の確実性なのである。