【4】共感測定の尺度について 

 

  1. 予測尺度(predictive measure
  2. 場面尺度(situational measure
  3. 共感体験の目録
  4. 第三者によるテープ評定(judged taped ratings) _行動指標
  5. そのほかにGSR(皮膚電気反応)、心拍数、プレティシモグラフ(生理的指標), 態度尺度(ポーター、1950),共感尺度(ホーガン、1969)などがある。

 私たちの研究では、4.のテープ評定をする。

この方法の特徴は、独立した第三者の評定者が面接の録音テープをもとに実際に提示されたセラピストの共感レベルを評定することである。

よく使用されているのが、「正確な共感尺度」(トルアックス、1961)である。彼は「正確な共感は現在の感情への敏感さと、この理解をそのクライエントの現在の感情に調和した言葉で伝える言語的な熟練との両方を含む」と定義して、ほとんどまったく共感のない状態から始まって、クライエントの全存在・全感情をもれなく理解し的確に応答するまでの9段階の連続した共感の尺度を構成している。その概略図を下記に記しておく。

 

 

現在明らかな感情

隠された感情

前意識的感情

無視

 

 

理解するが不十分

気づかない

 

しばしば正確

感じるがしかし理解は不十分

 

通常は正確

正確さは非常に低いが試みている

 

正確

敏感だが、いくらか不正確で試み的な解釈

 

正確

内容は正確、強度はそうではない

気づかない

正確

正確

明確な「指向」

正確

正確

敏感な試行錯誤的な探索

敏感で非の打ち所のない正確さ

敏感で非の打ち所のない正確さ

敏感で非の打ち所のない正確さ

    (Truax and Carkhuff,1967  正確な共感を測定するための尺度)

 現在この尺度は、世界中で研究されつつある。

この尺度は来談者中心療法の現象学的観察から出発して構成されたものであり、信頼性や妥当性の高いことも示しているし、実際にもよく使われている。

しかし、とらえようとする共感それ自体が精神内事象であることもあって、主観的な傾向はのがれられない。評定者は誰の目にも明らかな外的行動を対象にするのではなく、クライエントのわずかな言葉や音調を手がかりに、自己の内的体験に取り入れ吟味したものとの実際の場面でのセラピストのそれとを比較評定しなければならない。

それだけに評定そのものにはかなりの訓練を必要とし、即ち、共感の高い人にしてはじめてよくなしうるということにもなりかねないのである。また、評定者は治療者の理論的枠組みなり背景を十分のみこんでいないと、セラピストのクライエントの内的体験への取り入れ方、言語化の仕方の違いなどから深い動きに気づかず、ただ表面的な動きだけを評価してしまうことにもなる。

そのトルアックスの尺度とは独立して山本和郎と越智浩二郎(1965)は、「治療関係スケール」を発表した。このスケールは現象学的記述を困難にする理論的先入観を積極的に意識し、それが記述を充実させるならば排除しないという方向をとっている。その現象学的記述とは、観察者にとって現れてくる対象の意味をあらゆる先入観を排しながらその対策の置かれた立場に共に立ちながら現れるままにとらえ記述していくということであり、理論的先入観とは、既製の理論とかではなくわれわれの内部にいまだ未分化なままに生じて不完全な個人的概念によってまとめられているような体験のことである。

このような点から私たちはこの尺度を使うことにした。

「治療関係スケール」11尺度のなかで共感に関係している「セラピストのストランド」の4尺度を使用する。

4尺度とは、

  1. TCE:治療者の体験として取り入れられたクライエントの経験への関わり
  2. FAU:クライエントを理解するときの焦点の向け方
  3. RFC:クライエントに対する関心のあり方
  4. RCT:クライエントの関係の持ち方

である。 

詳しい内容は、後述する。