第2章  実験と手続き

 

 本研究では、ビデオ観察法を用いた。評価の実際をこの章では詳しく述べる。

 1997年4月10日から3ヶ月の夏休みをはさんで2月12日まで、週一回2クラスに別れて、神戸市社会福祉協議会、市民福祉大学によるヒューマンサービスコース中級が開講された。そこでコミュニケーション・ラボを使用した、最初の日(4月22日、24日)と最後の日(12月2日、4日)に行なった面接場面をビデオに録画する。両日参加した24人について治療関係スケールのセラピストのストランドを用いて臨床評価を行った。評価場所は関西学院大学社会学部校舎を利用させていただいた。参加者は、石原愛、冨岡潤子(以上関西学院大学社会学部立木ゼミ4年生)の、2名である。二人ともこのコースの各クラスに参加している。

 

【1】 被験者 

 

 被験者は、ヒューマンサービスコース中級受講者のうち、ビデオ録画をした両方の当日参加していた24名(男1名、女23名)。主婦、パート、会社員など。年齢は20代前半から60代までと幅広いが、40代主婦が中心層。

 

 

【2】 ビデオ録画手順

 

 録画は基本的に3人一組のグループとなってもらう。3人の内訳は、聞き手、話し手、そして録画係である。約5分づつ、みんながそれぞれの役に回るように、聞き手と話し手の面接場面を録画していく。コミュニケーションラボを使用した、初日と最終日は、原則として同じグループで面接で当たる役回りも、同じ人とになるようにする。

 やり方としては、まず、聞き手と話し手が向かい合って座る。使用カメラは2台で、聞き手、話し手をそれぞれを撮る。上半身、膝から上と頭までが映るようにする。(手の動きもわかる様にするため。)モニター画面は等分割になるようにセットし、2人が向き合って見えるように(その場面と同じに映るように)する。

 面接場面での、話す内容としては、初日は、中級コースへと進んできた動機や、この先やりたいこと、意気込みなどを中心とし、最終日は、コミュニケーションラボを使ってきての感想、また、ヒューマンサービスコース中級に対する意見、思うことなどを中心としたが、強制的なものでなく、会話の流れに任せるよう、講師も付け加えた。なお、本研究に使うことへの了解も取って録画した。

 

 

 

【3】 測定方法

 

 評価及び測定は次の手順で行われた。

  1. ビデオを見て、聞き手役の話した言葉(セリフ)を記録する。これは、観察者二人の一致度を高めるために行った。以後、評価する際はこの用紙を見ながら行った。
  2. 各自でビデオを見る。
  3. 2)で得られたデータをもとに、治療関係スケールの、セラピストのストランドを用いて各自測定していく。
  4. 各自の測定結果を照らし合わせる。
  5. 測定結果の点数に至った要因を、指摘しあう。
  6. 2人でビデオを見ながら、話し合って、最終的な点数を決める。 

 

 所要時間は、かくケース5分くらいであった。詳しい記録は巻末に添付。

 

 

【4】質問紙

 

 また、私たちは、他者への共感が技法として上達する際に、聞き手の内面の部分にも変化があるのではないかとジョハリの窓より考えた。特に、他者への共感度が増す度に、自己受容度も大きくなるのではないかと言う仮説を打ち出した。そこで、私たちは、自己受容測定尺度(石原、佐倉、高木、冨岡、西原、長谷川、1997)、コンピテンス尺度(栗本、1997)、自意識尺度・日本語版(菅原、1984)を用いて、自己発見尺度を作成し(目次2・表2参照)質問紙による測定を行った。

 日時は、ビデオ測定と同日。ビデオ測定のあとに行った。