方 法
調査内容
まず音楽活動(合唱コンクール)を実施する中学校と実施しない中学校1〜3年生を対象に,合唱コンクールの前後(合唱コンクールを実施しない中学校も,実施する中学校と同時期)2回,自己受容と他者受容についての質問紙調査を行った.なお両調査を通じて同一人物が答えたことが分かるように,IDを明記してもらった.
さらに自己受容尺度と他者受容尺度の質問項目を因子分析により選定し,最終的にはこの項目を使って,自己受容と他者受容に対する音楽の関連性を検討・考察する.
調査対象
調査の対象が中学生であることから,知り合いの中学校に依頼の手紙と質問紙のサンプルを同封して送付,あるいは直接持参した.その結果,8校の協力を得ることができた.
対象地区は大津市2校, 宝塚市1校,西宮市1校,橋本市2校,枚方市1校,福岡市1校だった.
配布した質問紙の総数は400部で,そのうち回収できたのは359部(男子183部,女子176部)であった.学年別にみると,一年生141部,二年生107部,三年生111部となった.回収率は89.75%だった.
調査日時
一回目は1997年9月1日に配布し9月30日までに回収した.二回目は1997年10月1日に配布し10月31日までに回収した.
測定用具
われわれ杉本・中井・中澤・長谷川・山浦(1997)は自己像を調べる尺度として自己受容尺度を,他者を通じて認識する自己像を調べる尺度として他者受容尺度を作成した.前者は4つの因子「自己理解」「自己承認」「自己価値」「自己信頼」からなり,石原・佐倉・高木・冨岡・西原・長谷川(1996)の研究結果から各因子で負荷量の高い項目を,6項目・8項目・6項目・8項目ずつの計28項目抽出した.後者についても同じく4つの因子「他者からの包容」「他者からの人間的ふるまい」「他者からの関心・注目」「他者からの評価」からなり,各4因子を10項目・6項目・8項目・8項目ずつの計32項目抽出した.これらの自己受容尺度28項目と他者受容尺度32項目をあわせた計8領域,60項目の質問紙を使い,“非常に当てはまる・少し当てはまる・どちらともいえない・ほとんど当てはまらない・全く当てはまらない”で回答する受容尺度を実施した.以下,下位概念の説明を行う.
自己受容尺度.
自己理解:自己の諸側面をあるがままに理解しようとすることであり,自己に冷静な目を向け,自分の ことが分かっていると自己認知すること.(項目番号Q10,Q17,Q27,Q31,Q43,Q59.P13表2参照)
自己承認:現在の自己を否定することがなく,現在の自己を承認すること.(項目番号Q5,Q11,Q22,Q26,Q41,Q44,Q48,Q60.P13表2参照)
自己価値:自分を価値ある存在とみること.(項目番号Q6,Q13,Q18,Q28,Q37,Q50.P13表2参照)
自己信頼:現在及び将来の自己の可能性に対して信頼感を持つこと.(項目番号Q12,Q19,Q23,Q32,Q35,Q38,Q45,Q49.P13表2参照)
他者受容尺度.
他者からの包容: 他者から否定されることなく,ひとりの人間として,認められていること.(項目番号Q2,Q8,Q14,Q24,Q29,Q46,Q51,Q52,Q54,Q57.P16表4参照)
他者からの人間的ふるまい:客観的にみて,他者から尊敬あるいは支持されていること.(項目番号Q1,Q7,Q15,Q16,Q36,Q53.P16表4参照)
他者からの関心・注目:他者から適度な関心・注目が払われていること.(項目番号Q4,Q9,Q25,Q30,Q34,Q47,Q55,Q58.P16表4参照)
他者からの評価:他者から自分にみあった評価を受けていること.(項目番号3,20,21,33,39,40,42,56.P16表4参照)
さらにフェイスシートでは学年,性別,ID を記入してもらった.