<<<<<<<<<<<<<<書籍掲載論文用カード情報>>>>>>>>>>>>>> 著者名:稲村博 論文名:海外日本人学校にはなぜ登校拒否が少ないか 書籍名:「登校拒否」 書籍編著者名:詫摩武俊  稲村博 編   出版社名:有斐閣選書 ページ:74〜88    年:1988.9.10 <<<<<<<<<<<<<<500字程度の要約・要約日>>>>>>>>>>>>>  筆者は、海外在住邦人の精神衛生問題を調査するために、先進国・途上国とを問わず多 くの国をまわるが、その一環として海外日本人学校の調査をする機会を持つ。学校の教材 も授業内容も内地と同じであり、生徒も先生も日本人ばかり、その上、父兄もきわめて教 育熱心です。それにも関わらず、なぜいったい海外の日本人学校には登校拒否が少ないの でしょうか。こうしたことを考えながら取り組む中から、重要な事実に気がついてきてい ます。それは、登校拒否の成り立ちについて、重要な示唆を含んでいるように思うのです。  学校が子供の心にしめる相対的な位置が多くの発展途上国のように、日本人学校以外ほ とんど他の学校を選びようがなく、学校以外に楽しみや遊びの場所がない場合には、学校 の条件が多少過酷でもまず登校拒否は起こりません。子供にとって日本人学校は身辺に存 在するもっとも楽しいところだからです。学校は子供にとってかけがえのないうえ、内地 以上にあらゆる意味で教育の理想に近づいた状態であるため、子供の心にしめる比重はき わめて大きなものとなります。こうした事情は先進国の日本人学校でもにているのです。  社会環境は国を問わずまことに厳しく、子供が1人で出歩くことなど考えられません。 多くの国では衛生状態が悪く、子供の買い食いなどはもってのほかです。カルチャーショ ックも例外でなく、現地の子が意志を投じるとか、反日感情が激しく、罪人のように振る 舞わなければならない国もあるのです。こうした諸条件は全世界で共通しており、危機感 は内地では想像できないものです。そんな背景が子供の中に学校の占める位置を大きくし、 家庭と並んでもっとも安全で心の許せる数少ない場所を生み出しているのです。  家庭のあり方では、親は力と愛情を持って子供を保護し、子供は信頼を持って親に対し ます。理由は社会環境によるもので、親子が運命共同体になる必然性があるわけです。親 子関係は質量ともに内地とはちがう緊密な結果がもたらされ、勉強に関しては内地以上に 過干渉で厳格です。にもかかわらず、登校拒否になりにくい点がいかにも示唆的なのです。 これらの諸条件は、日本で今日いずれも登校拒否を促進する方向で働いているわけで、こ れをいかに克服するのか大きな課題だといえます。 <<<<<<<<<<<<<<要約者担当者名・要約日>>>>>>>>>>>>>>> 三嶋 陽介 1988.8