<<<<<<<<<<<<<<<<書籍用カード情報>>>>>>>>>>>>>>>> 著者名:笠原嘉 書籍名:退却神経症−無気力・無関心・無快楽の克服 出版社名:講談社現代新書 年:1988 <<<<<<<<<<<<<<500字程度の要約>>>>>>>>>>>>>>>>> 人間にはそれぞれ本業とでもいうべき生活部分がある。そこからだけ選択的、部分的に退 却し、そのことだけに無気力・無関心になる。著者は、これを「退却神経症」と名づけた。 この退却神経症の骨格を標語化するならば、「無気力・無関心・無快楽」である。「無快楽」 とは、「快体験の希薄化」である。「人間が日常生活を営んでいるとき、必ずしも意識に上 るとは限らないが、多少とも感じているはずの快感がある。それを感じにくくなっている」 (191)という状態を指す。退却神経症は、自ら救いを求めることが少ない。それは「退 却することが行動化(アクト・アウト)であって、それ自体内面の苦悩体験からの、行動 による脱出という構造をもち、したがって本人は退却しているかぎり、苦しいという体験 を痛切にはもたないですむようになっている」「陰性の行動化」(97)という面をもって いるからといえよう。もっとも、中・高校生の登校拒否者がときにみせる母や父のみを対 象とする退行的攻撃などの行動は、もはや陰性とはいいがたいが、これらは退却神経症の 基本からいえば付加的症状とみてもよい。また、「自己分割」(113)も退却神経症の兆 候である。「ある人格部分」が完全に意識から排除されるのではなく、意識にとどまりな がら、「本来の人格」と同時的・並行的に存在する。言い換えれば、二つの人格部分の間 には薄皮が一枚介在していて、互いにうまく否認し合っている。なぜ退行するのか、本人 さえもはっきり分からないことを、知っておきたい。 <<<<<<<<<<<<<<要約者担当者名・要約日>>>>>>>>>>>>>>> 中嶋靖子1998.8.25