U−U 自由記述について(質問6−8)
回収された質問紙68ケースのうち、62ケース(91.2%)に自由記述があった。自由記述から、参加者が母親教室に何を求めまた何を得たのか探るべく以下の作業を行った。
まず、回答で共通して何度も使われている言葉・重要と思われる言葉に下線を引く。次に下線をひいた箇所の内容をまとめ、カテゴリーを作成する。(カテゴリー作成は、調査者3人が各々上記の作業を行った後、調査者全体の意見をまとめた。)
番号 |
カテゴリー |
回答数 |
内容(回答数) |
1 |
母親の精神的負担の軽減 |
28 |
気が楽になった(5) 子どものありのままを受け入れられるようになった (3) 教室によって支えられた(3) 気持ちが安らいだ(3) 精神的なゆとりが生まれた(2) 気長になった(2) 「母親である自分に不登校の責任がある」という自責の念が薄れた(2) など |
2
|
母親が前向きに変化 |
10 |
前向きになれた(7) 開き直れた(2) 強くなった(1) |
3
|
母親同士で同じ悩みを共有 |
43 |
同じ悩みのお母さんと話し合いができた(30) 自分だけが悩んでいるのではないと知った(6) 気を許して話すことができた(4) など |
4 |
教室外での母親同士の交流 |
9 |
今でも交流のある友人ができた(59) など |
5 |
母親の気付き・内省 |
19 |
気持ちを整理し、行動を振り返った(8) 学校が全てではないと分かった(4) 気長に見守ることが必要と気付いた(2) 子どもを全面的に包み込むことが大切と思った (2) など |
6 |
参考・勉強・情報交換 |
10 |
他のお母さんの話が参考になった(5) など |
7 |
親子関係改善 |
7 |
会話が増えた(5) 子どもが心を開くようになった(1) 子が自分のことを分かってくれると評価してくれた (1) |
8 |
夫婦関係改善 |
6 |
話し合いができるようになった。(6)
|
9 |
家族関係改善 |
5 |
家族の雰囲気が明るくなった(2) 不登校について家族が理解するようになった(1) 会話が増えた(1) 家族関係が良くなった(1) |
10 |
母親の行動に変化 |
16 |
子どもに対する接し方の変化(4) 家族に対して穏やかに接するようになった(2) 積極的に物事に取り組めるようになった(4) など |
11 |
子の行動に変化
|
22 |
行動的になった(14)
自分から話をするようになった(2) など |
12 |
助言が欲しかったという不満 |
9 |
具体的な解決方法を知りたかった(5) など |
13 |
教室の運営方法に関する不満 |
6 |
人数・時間が不適当(2) 回数をもっと多くして欲しい(1) カメラで録画することに抵抗を感じる(1) など |
14 |
交通費がかかった |
1 |
|
15 |
調査結果が知りたい
|
2 |
|
16 |
子どもが前向きに変化 |
16 |
興味のあること・目標を見つけ始めた(5) 明るくなった(3) しっかりしてきた(2) 前向きになった(1) など |
17 |
父親の行動に変化 |
5 |
気長になった(2) 母親の話を聞くようになった(2) 協力的になった(1) |
18 |
教師・学校に対する不満 |
5 |
もっと理解して欲しい(2) など |
19 |
子どもに友人の支えがあった |
3 |
友達と連絡をとるようになった(3) |
20
|
教室での失望感 |
3 |
子どものことを理解してもらえなかった(2) あまり意味がなかった(1) |
21 |
教室で何らかの変化 |
31 |
参照:質問紙 質問7に対応 |
作成したカテゴリーの相関関係を調べるために、コレスポンデンス分析をおこなった。各カテゴリーの数量化を行い、得られた重みの差異を関連性の指標とする。なお、分析の際、回答率が5%未満であるカテゴリー4つ(14「交通費がかかった」・15「調査結果が知りたい」・19「子どもに友人の支えがあった」・20「教室での失望感」)を削除した。
結果(上図)から、関連の強い項目の集まりをグループ1・2・3とし、単独で他のカテゴリーとの関連があまり見られないをカテゴリーを単独群として、考察していきたい。
@グループ1について
1「母親の精神的負担の軽減」・2「母親が前向きに変化」・7「親子関係改善」
8「夫婦関係改善」・9「家族関係改善」・10「母親の行動に変化」
11「子の行動に変化」・21「教室で何らかの変化」
不登校に対する主観的な振り返りに関する項目の集まりである。記述内容を見ていると、子どもが不登校になった時は驚き動揺し、なぜ自分の子どもは不登校になったのかと原因を探そうと不登校に対して否定的であるが、教室に参加することで自ら気持ちを整理し、不登校に対して前向きに取り組むようになった母親の様子がうかがえる。結果からは、「母親の行動の変化」が、「子どもの行動に変化」「教室で何らかの変化」を起こすことと関連が強いことを示している。このことより、母親との関わりを通じて子どもの変化を起こすことが可能だといえる。
Aグループ2について
3「母親同士で同じ悩みを共有」・5「母親の気付き・内省」
6「参考・勉強・情報交換」・16「子どもが前向きに変化」
不登校に関する客観的な振り返りの項目に関する集まりである。教室で母親たちは不登校の子どもをもつ他のお母さんとの出会いによって、悩んでいるのは自分だけではなく、不登校に対する考え方も人それぞれであることに気付き、不登校に対して新しい見方をもつ。このことは「子どもが前向きに変化」することにつながっていくと言える。
Bグループ3について
8「夫婦関係改善」・17「父親の行動に変化」
父親に関する項目である。母親が変わると父親が変化したという意見がほとんどであった。「子どもの行動の変化」との関連は、「母親の行動の変化」と比較すると薄い。このことから、「子どもの行動の変化」に結びつきやすいのは、父親の変化よりも母の変化といえる。これは、母親教室の焦点が、夫婦関係よりも母子関係に重点をおいていることを示している。
C単独群について
4「教室外での母親同士の交流」・12「助言が欲しかったという不満」
13「教室の運営方法に関する不満」・18「教師・学校に対する不満」
「母親教室で何らかの変化があった」という項目と関連が薄いカテゴリーである。「教師・学校に対する不満」は母親教室に関する記述ではないため、「教室外での母親同士の交流」は回答者の参加期が偏っているため、単独群に含まれていると考えられる。「助言が欲しかったという不満」「教室の運営方法に関する不満」は、母親教室を安心して話ができる場所・自分自身で気付きをしていく場所ととらえていない母親の声と捉えられるだろう。