U コレスポンデンス分析

 郵送した質問紙(付録1)は、選択項目(質問1−5,7)と自由記述(質問6−8)

で構成されている。それぞれにカテゴリーを作成し、コレスポンデンス分析をおこなった。

以下、その結果を報告し、考察していきたい。

 

U−T 選択項目について(質問1−5,7)

ここでは、回収された質問紙の選択項目(質問1−5,7)の関連性をみる。各カテゴ

リーの数量化を行い、得られた重みの差異を関連性の指標とする。

 

 まず、 アンケートの選択肢42項目と家族構成から、64項目のカテゴリーを作成す

る。次に作成したカテゴリーのうち、回答率が5%以下の項目は、次の2つのいずれかの

方法により項目を精選した。

@ 内容的に同一のカテゴリーとなりうる他の項目と組み合わせる。

A 他の項目と組み合わせることのできない単独の項目は削除する。

 以上の作業により、最終的に41カテゴリーを作成した。(付録2:カテゴリー表)

 コレスポンデンス分析から得られた結果(上図)をまず全体から、次にカテゴリーの

内容別に考察していきたい。

 

 項目が密集している箇所(以下グループとする)とグループに属さない項目に分けられ

る。グループのほぼ中心に「母親教室で変化があった」というカテゴリーが位置している。

これは、ある特定の回答者に変化がもたらされるのではなく、さまざまな経緯をもつ参加

者それぞれに「変化」は起こり得ることで、「変化」後の経過も様々であることを反映し

ているのではないだろうか。そしてDim1(1.12〜0.09)Dim2(-1.17〜0.2)Dim3(-0.6〜1.4)

に「指導教室」「塾など」「グループ指導」「一時保護」という子どもに直接かかわる資源

の項目が集まっており、「資源利用なし」が対照的な位置である Dim1(-

1.91024)Dim2(0.37268)Dim3(-0.57314)に位置している。「資源利用なし」に近い項目は、

「通信制高校通学中」「転校先にて登校再開」「定時制高校・通信制高校中退」「全日制高

校中退」「在宅」「子のみ通所」である。これらの項目はグループに属していない、つまり

「母親教室での変化」とは関連が薄いものでもある。これらに共通していることは、在宅

の要素と今いる学校との不適応(中退・転校)を感じさせる点である。これらの項目は母

親教室での変化の影響が及びにくいものである。

 

@家族構成について

 「核家族」「三世代同居」はグループに属するものの、「母子家庭」は他の項目と関連

が薄い。 これは、母子家庭への支援サービスの利用状況が核家族・三世代同居よりも少

ないということである。そして「母親教室での変化」との関連性の強さは、「核家族」>

「三世代同居」>「母子家庭」の順 に強い。

 

A中学卒業時までの資源利用状況

 母親教室参加後の不登校状況については、「原籍校登校再開」「保健室登校」がグループ

に属し、「転校先登校再開」は属さない。ここから、「転校先登校再開」が前者2つと違っ

て、環境の変化を伴うなど、同じ登校再開でも性質は異なるものと捉えるべきであるとい

える。ただ、「登校再開」に関しては再開しても不登校を繰り返す場合もあるので、母親

教室参加後から中学卒業時までで区切って尋ねたこの質問で登校再開したとされた対象児

童が不登校を終えたと判断し、予後が安定したととらえるべきではないことに注意したい。

 

B母親教室の出席状況

「ほぼ毎回出席した」者は「母親教室で変化があった」傾向があり、「半分以上出席した」

「たまに出席した」では、「変化」との関連が同程度に薄いことが分かった。これは全回

出席という参加原則の意義が表れている。

 

C年齢区分

「19才未満」よりも「19才以上」の方が、「母親教室で何らかの変化があった」とい

う項目に関連をもっている。これは、参加者は参加当時よりも年月を経て振り返った時に

母親教室を評価しているといえる。

 

課題

回答方法が自記式であるためケースワーカーの認識に基づく事実とは違う点もいささか

みられることから、項目の関連性が正確につかめていない恐れもある。しかし、教室に

参加した母親の認識を知ることはできたのではないだろうか。質問形式が不適切だった

ため予後の時間経過が把握できない面もあり、アンケート回収後に重要な項目で分から

ないことは電話により調査させていただいている。(その際回答を拒否されたものは、

分析では無回答と同様にその項目を欠損値として扱っている。)