T 単純集計

・パーセンテージの母数について

 @家族構成 A参加前の不登校状況 B参加後の資源利用状況における母数は質問紙を回収した68ケースで、C中学卒業直後の状況 D中学卒業から現在までの経過 E現在の状況については電話調査の10ケースを加えた78ケースである。@には質問紙の一部回答拒否や無回答、CとDには前述した電話での回答拒否、Eにはその両方が回答拒否として含まれている。

 

@家族構成について(質問1)

 現在の家族構成について尋ねたところ、結婚や就労により家族を離れ独立している人が5名いるが、その他一人暮らしも家族に含むと、核家族が76.5%、三世代同居が 11.8%、母子家庭が10.3%、回答拒否1.5%であり、うち母親教室参加後に離婚して母子家庭になったケースが1件あった。(表2)

 

表2 家族構成

数/回答数

核家族

52

76.5%

三世代同居

8

11.8%

母子家庭

7

10.3%

父子家庭

0

0.0%

回答拒否

1

1.5%

合計

68

100.1%

 

A母親教室参加前の不登校状況(質問2)

 母親教室参加前の不登校状況は、全欠が50%、断続欠が47%、保健室・別室登校が 3%であったが、不登校の発達過程における時期や年齢の違い、母親の主観などの影響があると思われる。ちなみに現在の母親教室参加者のほとんどは全欠状態であり、不登校の発達過程として断続欠から全欠へ移行し、登校再開前は断続欠となる場合もある。また、ケースワーカーの経験的認識では全欠の割合がもっと高いようである。(表3)

 

表3 母親教室参加前の不登校状況

回答数

回答数/全体(68)

全欠

34

50%

断続欠・渋り

32

47%

保健室登校

2

3%

合計

68

100%

B母親教室参加後の資源利用状況(質問3)

 母親教室後の資源利用の状況は原籍校登校再開が 11.8%、転校先での登校再開が5.9%、保健室・別室での登校再開が7.4%となり、これらに複数回答は含まないので、登校再開は全体の25.1%であった。また、児童相談所での通所指導を続けたケースは 全体の82.4%であり、内訳は親子ともに通所が42.6%、親のみ通所が32.4%、子のみ通所が7.4%であった。その他、複数回答を含んで資源利用を見ていくと、出席日数が認められる指導教室が12ケース、塾・家庭教師などが11ケース、児童相談所における子どものグループ指導が7ケース、一時保護所が7ケース、施設入所が4ケース、資源利用なしが5ケースであった。(表4)

 

表4 母親教室後の資源利用状況

回答数

回答数/全体(68)

原籍校登校再開

8

11.8%

転校先登校再開

4

5.9%

保健室登校(参加後)

5

7.4%

指導教室

12

17.6%

塾・家庭教師など

11

16.2%

親のみ通所

22

32.4%

子のみ通所

5

7.4%

親子通所

29

42.6%

グループ指導

7

10.3%

一時保護

7

10.3%

施設入所

4

5.9%

資源利用なし

5

7.4%

 

C中学校卒業直後の状況(質問4)

 中学校卒業直後の状況は進学が79.5%、就労・アルバイトが5.1%、在宅・家事手伝いが9.0%、回答拒否が6.4%であった。進学率が約8割に上ることは、母親教室参加前に半数が不登校全欠の状態だった(前述A)にもかかわらず、参加後におよそ4分の1が登校を開始した(前述B)という変化、そして高校進学に対する動機づけや環境の変化など要因が大きく働くものと推測される。また、進学しない残りの約2割では在宅が約1割、就労が約0.5割である。ちなみに進学の内訳は進学者を母数とすると、全日制高校が48%、定時制高校が21%、専修学校等が11%、通信制高校が19%となる。(表5)

 この結果を兵庫県のデータと比較すると、進学率が専修学校等も含めて97.5%よりもわずかに8%下回る程度だが、就労・アルバイトが1.7%の3倍、上記以外(無職・死亡・不明)の0.8%にあたる在宅・家事手伝い・回答拒否が約20倍と高くなっている。(資料1)

 

 

 

表5 中学校卒業直後の状況

卒業者数

78

進学

62(79.5%)

内訳

通学中

中退

卒業

休学中

全日制高校

30 (48%)

7

7

15

1

定時制高校

13 (21%)

1

7

5

0

専修学校等

7 (11%)

3

2

2

0

通信制高校

12 (19%)

4

1

7

0

合計

62(100%)

15

17

29

1

就労・アルバイト

4 (5.1%)

在宅・家事手伝い

7 (9.0%)

回答拒否

5 (6.4%)

合計

78(100.0%)

 

資料1 中学校卒業者の進路状況(H7兵庫県)

卒業者数

70,642

進学

68,219(96.6%)

専修学校等

630( 0.9%)

就労・アルバイト

1,221( 1.7%)

上記以外

572( 0.8%)

合計

70,642(100%)

 

D中学校卒業から現在までの経過(質問4)

 中学校卒業から現在を含めた経過を延べ人数で見ると、中学校卒業直後(表5)から定時制高校が3ケース、専修学校等が10ケース、通信制高校が4ケース増加は、高等学校過程の中退・転校が繰り返されていることを示している。(表6-1)

 

表6-1 中学校卒業後から現在までの経過

回答数

現在の年齢区分

進学

92

内訳

24 /68

   全日制高校

30

9 / 21

   定時制高校

16

4 / 12

   専修学校等

17

4 / 13

   通信制高校

16

7 / 9

   大学・短期大学

13

0 / 13

大検取得

3

2 / 1

留学経験

3

0 / 3

就労

16

1 / 15

アルバイト・家事手伝い

15

4 / 11

在宅

15

1 / 14

回答拒否

5

2 / 3

合計

149

34 /115

 

表6−2

中途退学(20人)

入学者数

中退者数

中退率

男/女

現在の年齢区分

中途退学直後の状況 

全日制高校

30

7

23.3%

4/3

1 / 6

定時制高校3

通信制高校1

在宅1

不明1

大検1

定時制高校

16

10

62.5%

9/1

3 / 7

アルバイト3

通信制高校2

在宅2

専修学校等1

就労1

大学1

専修学校等

17

4

23.5%

3/1

1 / 3

アルバイト2

就労1

行方不明1

通信制高校

16

2

12.5%

2/0

0 / 2

定時制高校1

大検1

大学・短期大学

13

1

7.0%

0/1

0 / 1

就労1

合計

92

24

平均24.4%

6/18

5 /19

 

表6−3  

卒業(30人)

入学者数

卒業者数

卒業率

男/女

現在の年齢区分

卒業直後の状況

全日制高校

30

15

50.0%

7/8

0 /15

大学10

アルバイト2

就労1

在宅2

定時制高校

16

5

31.3%

4/1

0 / 5

専修学校等3

就労2 

専修学校等

17

7

41.2%

3/4

0 / 7

就労2

不明2

アルバイト1

在宅2

通信制高校

16

7

43.8%

4/3

0 / 7

専修学校等5

大学1

アルバイト1

大学・短期大学

13

2

15.4%

0/2

0 / 2

就労2

合計

92

36

平均36.3%

18/18

0 /36

注)現在の年齢区分(高等学校卒業年齢未満/以上)

 

資料2 県立高校中途退学状況(H9兵庫県)

資料3 高等学校卒業者の進路状況(H7兵庫県)

   (中退率)

卒業者数

67,618

全日制高校

 1,494( 1.3%)

960

534

進学

31,902(47.2%)

定時制高校

  425(13.3%)

332

93

専修学校等

17,551(26.0%)

合計

 1,919 ( 1.6%)

1,292

627

就労・アルバイト

14,027(20.7%)

上記以外(無職・死亡・不明)

4,138( 6.1%)

合計

67,618(100%)

 

 予め中退率・卒業率は入学者数を母数にしており、現在通学中の者を含んでいることを断っておきたい。そこで現在までの経過(複数回答)のうち中途退学と卒業後の進路状況に注目する。(表6−2、表6−3)

 まず、中退経験者20人のうち4人が2度繰り返しており、その後の状況は進学が約38%、就労・アルバイトが約33%、大検取得が約8%、在宅等が約21%であった。また、中退率を兵庫県県立高校のものと比較すると、全日制高校が1.3%の約18倍、定時制高校が13.3%の約4.7倍となり、調査対象が20人ではあるが高い率を示している。(資料2)

 次に、高等学校課程卒業後の状況は、進学が約63%、就労・アルバイトが20%、在宅等が約17%であり、兵庫県のデータと比較すると、進学率は進学・専修学校等の73.2%に約10%とどかず、就労・アルバイトは20.7%とほぼ同じ、上記以外(無職・死亡・不明)にあたる在宅等は6.1%の約2.7倍となり、上記C中学卒業直後の状況のデータ比較よりも予後が良くなっていることが分かる。(資料3)また、大学・専門学校課程卒業後(専修学校等のうち専門学校の2人と大学・短期大学の2人)の状況は、就労・アルバイトが約83%、在宅が約17%であった。

 

E現在の状況(質問4)

 現在調査対象児童の年齢は様々であるため(図4)、就労・アルバイトの増加は自然であるが通学者との比較は難しい。そこで在宅に注目すると中学校卒業直後の在宅・家事手伝い7ケースからは少し増えているが、その状況は実質、外出可と引きこもりの8人つまり約1割について予後に改善が見られないと言える。(表7)

 

表7 現在の状況

回答数

内訳

現在の年齢区分

通学中

32(41.0%)

19 /13

   全日制高校

8

8 / 0

   定時制高校

1

1 / 0

   専修学校等

6

3 / 3

   通信制高校

7

7 / 0

   大学・短期大学

10

0 /10

就労

15(19.2%)

1 /14

アルバイト・家事手伝い

8(10.3%)

2 / 6

在宅

12(15.4%)

1 /11

   求職中

1

0 / 1

   受験浪人

1

0 / 1

   大検取得中

1

0 / 1

   外出可

5

1 / 4

   引きこもり

3

0 / 3

   不明

1

0 / 1

主婦

1( 1.3%)

0 / 1

行方不明

1( 1.3%)

0 / 1

回答拒否

9(11.5%)

2 / 7

合計

78(100%)

25 /53

注)現在の年齢区分(高等学校卒業年齢未満/以上)

 

・単純集計のまとめ

 以上の結果より、母親教室参加当時中学生(ただし高校生1人を含む)で不登校状態であった子どもは、学校や児童相談所などのフォーマルな資源と塾・家庭教師・私設の相談機関や質問項目以外に存在するインフォーマルな資源の利用で徐々に社会資源との関わりを増やしていることが分かる。兵庫県のデータ(資料1.2.3.)との比較により、中学校卒業直後の進学率は79.5%と意外に高いながらも中退率が高く(表6−2)、高等学校課程卒業後には進学率が低下しているという学校への適応の難しさが見られた。一方で、全体を通して在宅等の割合の格差は縮少しており、個々のペースで社会生活を送っている予後を窺うことができた。

 

 

F家族資源性(きずな・かじとり)と関係改善        

調査対象103名のうち、母親教室参加時にオルソンの円環モデルに基づく家族システムの健康機能度をきずな(cohesion)とかじとり(adaptability)の2変数について測定し資料として残っていた者が33名いる。このうち母親教室に参加して親子関係改善・夫婦関係改善・家族関係改善のいずれかが起った母親(以下、関係改善群)と、いずれも起らなかった母親(以下、非関係改善群)の家族資源性に差異が見られるか調べた。            

表8 きずなと関係改善 回答者数内訳

      低い            高い

バラバラ

サラリ

ピッタリ

ベッタリ

合計

全体

11

12

32

非関係改善

 

7

5

23

関係改善

2

4

3

0

9

      

表9 かじとりと関係改善 回答者数内訳

 

 

     低い                 高い  

融通なし

キッチリ

柔軟

てんやわんや

合計

全体

5

32

非関係改善

3

5

9

6

23

関係改善

注)境界線上に位置する場合は、両方のカテゴリーに配分する

 

 きずなについて(表8・図5)は、全体・非関係改善では割合に顕著な差は見られないものの、関係改善群ではきずなが低い回答者(「バラバラ」「サラリ」)の占める割合が、全体と較べて(それぞれ9%・10%)増加している。また関係改善群において最もきずなが高い「ベッタリ」は0%であった。概して、きずな改善とはきずなが低い状態から高めたものであるといえる。かじとりについて(表9・図6)は、非関係改善群ではかじとりが高い回答者の割合(「柔軟」39%「てんやわんや」26%)が大きいのに対して、関係改善群ではかじとりが低い回答者の割合が高い(「柔軟」39%「てんやわんや」26%)。関係改善群に「柔軟」の回答者が存在しないのは、柔軟が適切な領域であるためと考えられる。かじとりに関しては、低かったかじとりを高めるという改善傾向がみられた。以上、家族関係性について考察したが、今回は調査対象が33名と少なかった。調査対象を増えせば、より信頼性の高い結果が得られるだろう。家族資源性についての調査を母親教室参加当時だけでなく、関係改善を答えたのちに再度試み関係性の変化を調べれば、家族資源性と関係改善の関連が明確になるかもしれない。今後の課題である。