終わりに

私が在日韓国・朝鮮人一世の高齢化に焦点を当てて論文を書こうと思ったのはごく単純な動機からだった。ある福祉の専門書で「これから国際化していく中で外国人に対する福祉政策も重要な課題である。」という文を読んだからだ。当初私の中では恥ずかしながら、外国人=金髪=青い目という固定観念が強かった。幸運なことに私の大学には欧米からの留学生も多い。よしこのテーマで論文を書こうと単純に決めてしまったのである。このことをゼミの先生に相談すると神戸市長田区の鷹取教会内にある「神戸定住外国人支援センター(KFC)」を紹介してくださった。そこでボランティアとして行っているうちに私には新しい発見がたくさんあった。まず日本に在留する外国人のうち8割は在日韓国・朝鮮人であることである。その時点で私の外国人に対するイメージはくつがえされた。 そして歴史的経緯から彼らも高齢化していること、しかし彼らの老後は悲惨なものであることなどである。私には知らなかったことばかりで論文を書くにもゼロからの出発であった。

神戸市長田区にも「在日」は多いのだが、データがあまりにも少なすぎて苦労した。大阪の「在日」に関する専門書はたくさんあるのだが、神戸に関しては皆無に等しい。しかし私はデータが少ないからこそ神戸市長田区に絞って論文を書きたかった。私一個人の力は限られているが、私が書くことで長田区に住んいる「在日」のことをアピールしたかったのだ。震災以降にやっと目をむけられ始めたが、でもそれ以前からしっかりとこの地で生き続けてきたのだということ、だからこそ老後は豊かに迎えて欲しいということを多くの人に知って欲しいという思いからこの論文を書いた。

この論文を書くにあたって多くの人とのすばらしい出会いがあった。まず鷹取教会の人たち。震災復興に今でも尽力を尽くされており、あの時の体験を風化させないよう日々努力されている。中でも論文を書くにあたってKFC副代表のKさんには本当にお世話になった。そしてヒアリング調査でお世話になったRさん。Kさんの紹介で見学に行かせていただいた大阪の「在日」高齢者のための民間デイサービス「サンポラム」の人たち。大阪で同じテーマを研究している大学生達、Rさんの紹介で手伝いにいった識字教室「ひまわりの会」の人たち。そして何よりもこの論文を書いたことで長田区の「在日」一世たちと大阪の「在日」一世たちと触れ合えたことが私には大きな収穫だった。すべての人たちに本当に感謝したい。

そして最後にKFCを紹介してくださり、ヒアリング調査をするうえで相談にのってくださった担当教授の立木 茂雄教授、老人福祉について助言をくださった浅野 仁教授に深く感謝してこの論文の締めくくりとしたい。