第三章 在日韓国・朝鮮人と社会保障

  1. 在日韓国・朝鮮人に対する社会保障制度の問題点

第二章で神戸市長田区の高齢「在日」一世の方にお話を伺ってきわめて厳しい老後の実態が浮き彫りになった。なぜこれほどまでに生活が保障されていないのだろうか。それは日本の高齢者には確立されている社会保障制度が「在日」には閉ざされていたからだ。いってみれば高齢「在日」一世は納税の義務だけ課せられ、権利の保障はされないという矛盾した状態におかれているのである。高齢「在日」一世に対する社会保障制度の不備な点を以下に列挙したいと思う。

 

<1>地位が確立されていなかった。

1952年のサンフランシスコ講和条約で一方的に日本国籍を取り上げられ外国人となった時から、「在日」にも在留資格がつきまとう形となった。そもそも「在日」の歴史的経緯からみて、日本国内居住が日本政府の許可によってみとめられるということ自体おかしな話である。外国人となった「在日」はいくつかの社会保障制度から国籍条項によって疎外されることになった。日本に生活の拠点をおく「在日」にとって在留権はあらゆる保障問題に影響を及ぼすものである。彼()らは日本人の植民地政策の犠牲にあってきたのだから、日本の居住に関しては日本国民と同様に無期限・無制限で絶対的に保障されなければならなかったのにそれさえも揺さぶられ続けた。 

<2>年金が支給されない。

高齢「在日」一世の大半が無年金であることは再三述べてきた。老後の生活基盤を支えるうえで年金の占める率は大きい。社会保障制度を改善していくということは、前の法律で対象外となった人たちを救うということだ。日本人ならその点も考慮されて改善されていったのに、「在日」に関してはなおざりにされてきた。そのため高齢「在日」一世は公的年金制度の改革から取り残されてしまったのである。 

<3>準用扱いの生活保護

無年金の高齢「在日」一世が頼らざるを得ないのが生活保護である。しかしその適用は「準用」扱いとなり不服申し立てはできない。また金額的にも公的年金と比べると老後を支えるには充分とはいえない。しかしそれを訴える道は「準用」ということで閉ざされているのである。 

<4>敷居の高い社会保障

すべての社会保障制度がはじめから国籍条項があったわけではない。中には当初から国籍条項はなく「在日」にも適用されるものもあった。しかしそれらは被用者年金、被用者保険のように「在日」にとっては高嶺の花のものばかりだった。というのも就職差別のため「在日」は零細企業に勤めるか焼き肉屋などをを経営する自営業、パチンコ店のようなサービス業に従事するものがほとんどだったからだ。そのため国籍条項はなくても就学上適用されることのない社会保障制度は「在日」にとって無意味なものだった。