方 法
被験者 兵庫県、大阪府、福井県下の小学5年生から高校3年生までの1661名(うち男子769名、女子892名)。
材料 以下の予備的検討(ⅰ.~ⅴ.)を通して選定した、Seligman(1991)のCASQに準じる形式の計96項目を、下位概念と項目のバランスを等しくして24項目ずつに分割した4種類の質問紙(K,U,C,M)。
ⅰ.セリグマン(1991)は、7歳以上の子どもにはすでに説明スタイルが確立されつつあるとしているが、8歳に満たない子どもへの質問紙検査は信頼性が低いため、CASQの対象を8歳から13歳までとしている。14歳以上の子どもに関しては、一般成人用のASQの施行を認めている。本研究は、序論で述べたように、昨今の学校教育場面における問題を重視しており、このような問題の解決へのアプローチに有効な質問紙の作成を目的としているため、より広い学齢層にあたる小学校高学年児から高校生までを調査の対象とした。
ⅱ.SeligmanのCASQは、48の出来事について、それらが起こったと想定させた上で、その原因をどのように帰属するかを2択で選ばせるものである。本調査では、質問と回答の形式はSeligmanのCASQに準じることとしたが、検査の簡便化を目指して、項目の節約と文章の簡潔化を図った。最終的に24項目の質問紙を作成するために、ここではパイロットテストとして、96項目について相当数のサンプルを収集・分析することとした。
ⅲ.SeligmanのCASQは、良い出来事(good event:以下、Gと略称)と悪い出来事(bad event:以下、B)の各々の説明スタイルに3つの因子、すなわちPersonalization(個人度─内向的あるいは外向的:以下、Ps)、Permanence(永続性─永続的あるいは一時的:以下、Pm)、Pervasiveness(普遍性─普遍的あるいは特定的:以下、Pv)を含んでおり、計6因子で構成されている。本調査では、過去のさまざまな説明スタイルに関する文献研究から、必要だと思われた下位概念を、セリグマンの6因子の下に独自に設けることを試みた。まず、出来事が起こる場面設定においては領域の偏りをなくすため、学校場面(school:以下、s)と日常生活場面(daily:以下、d)とが半分ずつの割合になるようにした。さらに、出来事の重要さや深刻さの度合によって説明スタイルが変わる(新名、1984)ことに考慮し、出来事を重いもの(heavy:以下、h)と、比較的軽いもの(light:以下、l)とに分けた。従って、1つの因子の下に4つの下位概念を含む、6×4=24の概念がつくられた。これら概念の各々の略称は、以下の通りである。
・PsG-s/h, PsG-s/l, PsG-d/h, PsG-d/l, ・PsB-s/h, PsB-s/l, PsB-d/h, PsB-d/l
・PmG-s/h, PmG-s/l, PmG-d/h, PmG-d/l, ・PmB-s/h, PmB-s/l, PmB-d/h, PmB-d/l
・PvG-s/h, PvG-s/l, PvG-d/h, PvG-d/l, ・PvB-s/h, PvB-s/l, PvB-d/h, PvB-d/l
ⅳ.上のⅰ~ⅲをふまえて、立木ゼミ生5名が各自で、24の概念に合致する質問項目を2個ずつ、1人48項目、計240項目を考案した。各項目について一人一人が因子を分類し、全員の分類結果が一致したもののうち、質問の内容が重複しないこと、想定しやすい場面設定であることなどに配慮して選んだ96項目が採用された。これらの質問項目を、24の概念に対応した24項目ずつの質問紙に4分割し、それぞれK・U・C・Mと命名した。項目は概念に関わりなく、ランダムに配置された。
ⅴ.SeligmanのCASQにおいては、選択肢は「1」と「2」で示されているが、数字の大小によって引き起こされる被験者の選択肢への先入観を避けるため、より平等と思われた文字(「ア」・「イ」)による選択肢を採用した。
なお、教示の文章は以下の通りである。「もし次のようなことが起きたら、あなたはア・イのどちらのことを考えますか。近いと思う方の記号に○をつけて下さい。どちらを選んでもまちがいということはありません。」
手続 1998年7月、上記の質問紙を実施した。
ASQ:CASQ-KG ;楽観度
IN:IN-OUT(=Personalization);個人度
PM:Permanence ;永続性
PR:Pervasiveness ;普遍性
GHQ:GHQ28
SS:Somatic Symptoms ;身体的障害
AI:Anxiety and Insomnia ;不安と不眠
SD:Social Dysfunction ;社会的活動障害
DE:(Severe) Depression ;うつ傾向
CASQの採点方法
良い出来事の質問項目においては、より楽観的な方の選択肢への回答に1点、より悲観的な選択肢への回答に0点を与えた。悪い出来事の項目においては、より悲観的な方の選択肢への回答に1点、より楽観的な選択肢への回答に0点を与えた。各次元(PsG・PsB・PmG・PmB・PvG・PvB)ごとに合計点を出し、良い出来事全体の得点(G=PsG+PmG+PvG)から悪い出来事全体の得点(B=PsB+PmB+PvB)を引いたもの(G-B)を、CASQにおける総得点、すなわち説明スタイルの楽観度とした。