結 果
(1)項目尺度間相関および因子分析
まず、CASQ-KG、GHQ28のそれぞれについて、項目尺度間の相関を調べた結果を、表4、表5に示した。これを見ると、各々に有意な相関が認められたことがいえる。
表 4:CASQ-KGの項目尺度間相関表

表 5:GHQ28の項目尺度間相関表

次に、GHQ28について、項目の評定値に対する因子分析を行った。主因子法により有意な因子数を算出し、因子数を固定した後バリマックス回転を施した。その結果、表6に示したように、予想されたおおよその因子構造が得られた。
表 6:GHQ28の因子構造表

(2)数値分布の検討
CASQ-KG(3因子)とGHQ28(4因子)との関係性について、数値の分布を検証した。ASQ・IN・PM・PRの中央値をそれぞれunivariateプロットで算出し、中央値を境に楽観群と悲観群に分けた。ASQの両群各々について、GHQ・SS・AI・SD・DEの数値分布をあらわす箱ひげ図を作成した。また、IN・PM・PRについては、GHQ分布の箱ひげ図のみ作成した。なお、ここではGHQ得点が高い(=健康度が低い)ほど、低い測定値で示されるようにした。従って、いずれの箱ひげ図においても、楽観群が悲観群より、中央値・平均値ともに高くなることが予想された。以下に、各図の説明を行う。
図 1 :ASQ-GHQ

1:ASQ─GHQ
CASQ-KG
全体の得点(=楽観度)とGHQ28全体の得点(=精神的健康度)との関係を調べた。楽観群のGHQ得点は、中央値21、平均値19.69364であった。悲観群では中央値20、平均値18.79699であった。中央値・平均値ともに楽観群が悲観群より高く、楽観度と精神的健康度との間に有意な相関関係が認められた。
図
2:ASQ-SS

ASQ─SS
CASQ-KG
全体の得点(=楽観度)とGHQ28中のSS得点(=身体的障害)との関係を調べた。楽観群のSS得点は、中央値4、平均値4.215909であった。悲観群では中央値4、平均値3.948148であった。中央値は同じであったものの、平均値に有意な差が見られ、楽観度と身体的障害との相関が認められた。
図
3:ASQ-AI

3:ASQ─AI
CASQ-KG
全体の得点(=楽観度)とGHQ28中のAI得点(=不安と不眠)との関係を調べた。楽観群のAI得点は、中央値5、平均値4.718391であった。悲観群では中央値5、平均値4.451128であった。中央値は同じであったものの、平均値に有意な差が見られ、楽観度と、不安と不眠との間に、相関が認められた。
図
4:ASQ-SD

4:ASQ─SD
CASQ-KG
全体の得点(=楽観度)とGHQ28中のSD得点(=社会的活動障害)との関係を調べた。楽観群のSD得点は、中央値6、平均値5.297143であった。悲観群では中央値5、平均値5.007407であった。中央値・平均値ともに楽観群が悲観群より高く、楽観度と社会的活動障害が高い相関関係にあることが示された。
図
5:ASQ-DE

5:ASQ─DE
CASQ-KG
全体の得点(=楽観度)とGHQ28中のDE得点(=うつ傾向)との関係を調べた。楽観群のDE得点は、中央値7、平均値5.409091であった。悲観群では中央値6、平均値5.325926であった。中央値・平均値ともに楽観群が悲観群より高く、楽観度とうつ傾向との間に高い相関が認められた。
図
6:IN-GHQ

6:IN─GHQ
CASQ-KG
中のIN得点(=個人度)とGHQ28全体の得点(=精神的健康度)との関係を調べた。楽観群のGHQ得点は、中央値20、平均値18.8141であった。悲観群では中央値21、平均値19.81333であった。中央値・平均値ともに悲観群が楽観群を上回り、仮説に反する結果となった。
図
7:PM-GHQ

7:PM─GHQ
CASQ-KG
中のPM得点(=永続性)とGHQ28全体の得点(=精神的健康度)との関係を調べた。楽観群のGHQ得点は、中央値21、平均値20.4129であった。悲観群では中央値19、平均値18.16556であった。中央値・平均値ともに楽観群が悲観群より高く、永続性と精神的健康度とが相関関係にあることが認められた。
図
8:PR-GHQ

PR─GHQ
CASQ-KG
中のPR得点(=普遍性)とGHQ28全体の得点(=精神的健康度)との関係を調べた。楽観群のGHQ得点は、中央値21、平均値19.56452であった。悲観群では中央値20、平均値18.9であった。中央値・平均値ともに楽観群が悲観群より高く、普遍性と精神的健康度との相関関係が認められた。
以上のように、
ASQ−GHQ(図1)、ASQ−SD(図4)、ASQ−DE(図5)、PM−GHQ(図7)、PR−GHQ(図8)においては、概ね予想通りの高い相関が得られた。有意とはいえ高い相関が得られなかった(中央値に差が見られなかった)ものとしては、ASQ−SS(図2)とASQ−AI(図3)が挙げられる。ところがIN―GHQ(図6)だけは「個人度に関わる説明スタイルが楽観的な人ほど、精神的健康度が高い」という予測とは裏腹に、IN悲観群の方が、GHQの数値分布において高い精神的健康度を示す結果となった。