序論
心理学的側面からみたスポーツ
スポーツは、個人または集団が、相手の力や技能を競ったり、自然の障害を克服するこ
とを楽しむ活動である。
(山本、1985)そしてスポーツには、次にあげる心理的特性がある。
1.競争性 スポーツではルールによって対等の条件で競争し、その過程や結果に
楽しさが経験される。
2.自己開発性 自分自身に課題を与え、それに挑戦することを楽しみ、それを通し
て自分自身を開発することに喜びを感ずる。
3.協同性 スポーツは個人で行われるものもあるが、集団で行われることが多い。
その集団においては各メンバーの役割分担がなされ、共通の目標達成の為に技術的・精神
的に協力し合う。さらに相手に勝つために味方が協力するという競争的協同であることが
多い。
4.公開性 スポーツは開かれた場で行うという公開性がある。他の人の前でスポ
ーツをし、自己のプレーや態度、行動が客観的に判断される。このために観られても恥ず
かしくないプレーをしたり、スポーツマンらしい気持ちの良い行動をすることが要求され
る。その行動規範こそすなわちスポーツマンシップである。
5.親和性 スポーツの場においては、表情や身体活動によって、言語を媒介にしないで
互いにコミュニケートすることができる。又一緒にスポーツをすると、互いに親和感が生
まれ、理解し合える。国際親善や障害者の社会適応にも大きな成果をおさめているのもこ
の特性によるものと考えられている。
6.心的緊張の解消 スポーツは日常生活における心的緊張や不安を解消させる。
これは心理面に対する効果に関する特性であり、日常生活とは分離した虚構の活動であり、
日常とは異なった人間関係によって行われるものだからと考えられる。
(松田、1979)
今回は特に競技としてのスポーツに焦点を絞る。競技スポーツにおいて、日頃の練習の成
果をあらわすものが、競技会・試合での勝敗・成績や記録である。選手達は勝つ為、成績
や記録をのばす為に、鍛錬を繰り返す。
競技活動や競技成績は大きく分けて、次の3因子の相互作用によって規定される。
(1)チームや観衆(役割期待、運動課題の要求)などの場や環境の因子
(2)コーチ、監督のパーソナリティ、態度、能力などの指導力の因子
(3)競技者のパーソナリティ、態度、意欲、学習能力などの因子
この論文では特に、パーソナリティ、集中力、精神力、不安、あがりといった競技者の内
的要因が、競技成績にいかに影響を与えるものであるか、言及していく。