第2章   実験と手続き

 

 本研究は、昨年度立木ゼミ卒業生の引き継ぎであり、ビデオ観察法を用いたものである。対象としたのは、神戸市社会福祉協議会・市民福祉大学において1998年4月11日から3ヶ月の夏休みをはさんで12月5日まで週一回(土曜日)にヒューマンサービスコース初級・中級が開講されました。この講座において、コミュニケーション・ラボという面接場面をビデオに録画し、検証していくものを最初の日(4月25日)と最後の日(10月31日)に撮りました。このビデオをもとに両日参加した23人について治療関係スケールのセラピストのストランドを用いて臨床評価を行った。評価を行ったのは、西尾武文・渡辺麻子(関西学院大学社会学部立木ゼミ4回生)の2名です。この2人は、ヒューマンサービスコースには参加していません。

 

 

【1】 被験者

 

 被験者は、ヒューマンサービスコース初級受講者11名(男2名・女9名)と中級受講者(男1名・女11名)の両日に参加された方でです。年齢は、20代前半から70代後半までと幅広く、職業も主婦・大学生・会社員・パートと様々でしたが、40代主婦が中心層でした。

 

 

【2】 ビデオ録画手順

 

 録画は、3人1組となり聞き手・話し手・録画係りとそれぞれが役割を持って遂行する。1人あたり約5分づつで、3人それぞれがすべての役割が回るようする。また、コミュニケーションラボを使用したときの両日(最初の日と最後の日)は、原則として同じグループで同じ役割をしたうえで、聞き手と話し手の面接を録画するようにした。

 やり方としては、聞き手と話し手が向かい合って座り、その2人を同時に見える位置に録画係りが座る。使用カメラは2台で、聞き手・話し手をそれぞれ上半身(頭から膝まで)が画面に映るようにセットして撮る。(手や足の動きがわかるようにするため)モニター画面は2等分割になるようにし、2人が向かい合って見えるようにする。(現実の場面と同じように画面に映すため)

 面接場面での話す内容としては、初日は「最近面白かったことや楽しかったこと」についての話しを中心にし、最後の日は「身の回りでおきた話し」についてを中心に話していただきました。初級・中級受講者は共に強制的ではなく、会話の流れに任せるように講師からも付け加えられています。なお、本研究にコミュニケーションラボが使用されることについて了解も取って行いました。

 

 

【3】 測定方法

 

 評価及び測定は次の手順で行われた。

1、昨年のビデオを見て練習する。これは、観察者2人の一致度を高めるために行う。

2、各自でビデオを見て、聞き手役の話した言葉(セリフ)を記録していく。これは、以後、

  評価する際はこの用紙を見ながら行う。

3、ビデオをの内容とデータをもとに、治療関係スケールのセラピストのストランドを用いて

  各自で測定していく。

4、2人でビデオを見ながら、各自の評価を照らし合わせる。

5、測定結果の点数に至った要因を指摘しあう。

6、議論し合い、最終的な点数を決める。

 

 

【4】 質問紙

 

 質問紙は、他者への共感が技法として上達する際に、聞き手の内面の部分にも変化があるのではないかと考えからジョハリの窓を参考に作成したものです。特に、他者への共感度が増す度に、自己受容度も大きくなるのではないかと言う仮説を打ち出した。このことから、自己受容測定尺度(石原・佐倉・高木・冨岡・西原・長谷川・1997)、コンピテンス尺度(栗本・1997)、自意識尺度・日本語版(菅原・1984)を用いて、自己発見尺度を作成した。