<<雑誌論文カード>> 著者名:米本 秀仁 安井 愛美 論文名:「大学における福祉実習教育の現状と課題−北里学園大学の経験から−」 雑誌名:『ソーシャルワーク研究』 巻:Vol.15 号:No.1 ページ:11〜13    年:1989 <大学側から> 社会福祉教育の目標の一つは、社会福祉実践家の養成である。また、ワーカーはクライ エントに新卒だからといって自己の成熟を待ってもらう権利はなく、ワーカーの最善の 援助を受けることはクライエントの権利である。つまり、大学で教育課程を終えた時点 で、ワーカーは最善の基準を習得していることが前提なのである。福祉教育はこの現実 に適応できるよう編成されなくてはならないが、重要な科目の一つである「福祉実習」 が学校毎に異なることからしても、福祉系大学で共通して認識されているとはいえず、 実習教育体系の編成への努力は不十分だ。 <実習教育に問われているもの> 1:「実習」とは何か、社会福祉教育カリキュラム体系において「実習」をどのように意 味付けるのかということを明確にするべきだ。また、社会福祉実習が、実習先の分 野の専門家の養成(specific)か、社会福祉一般の実践家の養成(generic)なのかに よっても実習の構成は変わる。 2:社会福祉実習の意味付けは、学科で統一的に認識することが困難であり、また学生 によってその受け止め方、意味付けは異なってくる。目標が「実践家の養成」であ ってもそれは建前で、資格のための科目の一つにすぎず、教員免許上と同様、実際 はその職業に就かない学生も実習を行う。実習動機の多様化は現実問題として避け られず、たとえ姿勢を統一できなくても、現場に入る以上最低の「ルール」を大学 と現場とが連携して組み立て、それを学生は従う義務を負うべきである。 3:実習においては、実習先に関する事前学習を怠らず、全体の講義において実習ルー ルを徹底させるべきである。実習中の訪問指導と実習後の報告と細やかなアフター ケアーも必要。 4:社会福祉実習教育は、実践家養成という目標を含む福祉教育において重要な位置を 占める。よって実習教育体制は、適確な大学・教員・学生・施設・職員で大きな体 系を構成しなくてはならない。 <今後の課題> @ 実習の構造を明らかにするため、実践構造論、援助技術論、スーパービジョン論など を理論的に解明する作業 A 実践現場職員との共同研究、共同開発の作業 B 他教科との有機的連携 …特に「援助技術演習」 C 専任職員の確保及び実習教育設備・機器・教材等の開発 D スーパービジョン体制の確立