著者名:森井 利夫 論文名:「医療社会事業教育の問題点」 雑誌名:『医療と福祉』 巻:Vol.5-4 号:No,11 ページ:4〜8 年:1968 <1 医療社会事業教育の現状> 現在の大学教育の内容は、医療社会事業従事者の基礎となるための検討が不十分である。 カリキュラムに関しても社会福祉とその関連領域をすべて満たそうとすると、複雑多岐 なものになるし、焦点も不明確になる。実習では、学生の増加、現場のスーパービジョ ン態勢を考えると、実習配属自体とても厳しい現実にある。 しかし、医療社会福祉士法案が成立するしないに関わらず、大学教育においては、医療 社会事業の現業に対応できる配慮が必要である。 セカンダリーセッティングの施設でSWが働く場合には、その特殊性を理解しなければ ならないし、社会事業の基礎教育のうえにスペシフィックコースを充実させ、実習とこ のコースの関連性をもたせられるよう、カリキュラムを根本的に変えなければならない。 <2 医療社会事業の特殊性> 医療社会事業者養成のために必要なこと…教育側の主体的責任である。 ・他の専門職とチームワークがとれるだけの医療に対する独自の見解や理解。 ・他のスタッフの機能を理解できる医学知識。 ・自ら機能する医療のしくみ。 ・患者全体にかかわる問題を把握するための、病気そのものについての知識。 <3 医療社会事業教育の課題> 大学の経営から、授業のマスプロ化、教員の労働強化、きめ細かな指導の妨げなどの問 題がある。理系のように、確実に知識・技術体系を習得できる教育体制の整備が必要で ある。 現在では、3年次までに社会事業の基礎をおさえ、4年次にスペシフィックな教育と実 習を集中させるほかない。4年制大学で、基礎を習得し必要な領域について専攻科をも うけることが理想である。現場での経験が、医学教育のインターン制と同じ意味をもつ とするなら、責任は大学にあり、大学の主体的な計画と医療機関との協力において進め られるべきである。