<<雑誌論文カード>> 著者名:竹内 一夫 論文名:「ソーシャルワーク教育における実習の現状と在り方を考える」 雑誌名:『ソーシャルワーク研究』 巻:Vol.24 号:No.2 ページ:22〜27    年:1998 <大学からみて> ソーシャルワーク教育の目的は、実践能力をもつ社会福祉専門職を養成することにある。 また、実習は実践能力を高めることへの取り組みである。専門職の養成は現場の要望で もあるが、大学がこのことに積極的であるなら、実習や演習は不可欠なものとなる。ま た、実習という人事交流は大学と現場との乖離現象をなくし、社会福祉全体のレベルア ップにつながるであろう。社会福祉が実践の学であり、実践との連携のもとに築かれて きたのならば乖離現象はありえないのだが、歴史的にみても連携は不十分であり、今な お根強く存在しているといえる。 <ソーシャルワーク教育における実習> 実習は、福祉専門職に就きたい学生が、現場で実務に就くために、大学での講義・演習 などからの学びと、現実の臨床現場での実務との関連性を学ぶためのインターフェース である。ソーシャルワーク教育における実習は、大学と現場との間で相互の情報交換に 基づく学びと、現場で実体験が不可欠であり、どちらが欠けても実践の学とはならない。 ただ、実習が専門職の必須条件であっても、学生が自己の適性を判断し、方向転換する 機会を与え、そのための適切なガイダンスも、実習教育においては重要である。 <実習受け入れ施設・機関と実習> 現場の問題点 ・実習先にさまざまな種の実習生が現れまた増加していること ・実習生に対応しなくてはならない実習指導員の負担 ・ 実習が休暇中に集中すること @この状況を緩和させるために、大学は現場に実習を任せているのが現状である。 <資格制度と実習> 本来、ソーシャルワーク教育での実習は、資格を取るためではなく自己の関心に基づく ものだが、社会福祉士受験資格のための指定施設で実習を希望する学生が増加している。 <現在の学生と実習> どのような領域においても、援助者に求められるものは成人としての人間性である。実 習中の問題は学生の社会生活技能の欠如によるものが多く、学生の成熟度に合わせた専 門職養成のための教育が必要である。 <実習指導体制> 実習指導には、対人援助を主とした実習内容と細やかな教育のために、実習現場に精通 し、スーパービジョンができる臨床経験をもつ教員が必要だ。 大学教員は、ワーカーとしての経験や実績よりも業績が問われ、臨床経験の豊かな現場 のワーカーは教員とはなりにくい。抜本的な改善として教員組織の見直しも必要。 <まとめ>(26) 1:社会事業学校連盟の養成基準にある「現場実習の基本的達成課題」の見直しと具体 的実践方法、スキルの提示…誰であっても受けられる援助の最低限ラインが必要で あり、そのために技術と技能は共通であるべき。 2:現在の学生の成熟度と発達段階に合わせた専門性習得段階の組み立て 3:実習担当教員(大学等)と実習先である実践現場との間に入るコーディネーターの 検討…直接教員と実践家が接触すると本音が伝わらないことがある。問題点を客 観的に言える中立的な立場の人間が必要。 4:大学、養成機関での実習カリキュラムの件等への実践家の参画