<<書籍論文カード>> 著者名:佐藤 俊一 章のタイトル名:「2−四 医療と人間の問題               ―医療ソーシャルワーカーの立場からー」 書籍名:『医療と組織の人間学 ―現場からの提言―』 書籍著者名:佐藤 俊一 出版社名:川島書店 ページ:123〜134    年:1988 昭和五六年に診療報酬点数が改正されてから、病院の経営はますます困難になっている。 しかし点数を稼ぐことという目先の問題にとらわれては、一時的な解決にしかならず、 患者さんが安心し、病院を信頼して受診できないならば、結局患者さんの数は減少し、 そうなれば点数も減ってまうであろう。 病院では、医療者が患者さん、その家族とどのように関わるのかということについて、 基本的な考え方を問いなおしていく必要がある。医療における人間への関わりは、看護 婦や医療ソーシャルワーカーだけが行うものではなく、病院が組織としてチームプレー で進めなければ、病院と患者さんとの信頼関係はできないからだ。 医療のコ・メディカルの関わりが問われているのであるが、今日において医療ソーシャ ルワーカーが必要とされているのは、高齢化社会が進み慢性疾患者の数も増え、継続的 なかかわりや、医療機関への受け入れの窓口の役割、入院中の患者さんや家族への心理 的援助、社会的資源の活用、リハビリテーションの問題、退院後のケアなど、病気によ って起こる問題がたくさんあるからだ。 患者さんの社会的な環境や対人関係などはそれぞれ個別的であるし、患者さん自身一人 の人間であり、関わり方は個別に変わってくる。ワーカーの主観を明らかにし、対象そ のものを理解して、適切な態度をとることが必要なのだが、個別性を大切にすることが、 ソーシャルワークの基本的な方法論であるからこそ、それを院内に直接的でなくとも浸 透させ、患者さんそれぞれに合った医療を進めていくことが医療ソーシャルワーカーの 役割でもあるのだ。 このような、医療ソーシャルワーカーの人間科学への視点は、地道に実践していくしか なく、それが唯一患者さんの信頼という無形の財産を得る方法なのである。 人間科学への問いは、相手が見えていないという気づきであり、それは相手がみえてい ない自分が見えることになる。これが人間の科学の難しさなのである。